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大学 CaLaboEX

慶應義塾大学 日吉キャンパス

『CaLabo EX』やLMSは学習を支援する道具として大いに活用できる

20101002 掲載

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 慶應義塾大学では、幼稚舎(小学校)から大学院にいたる義塾全体の外国語教育を支援し、充実させるため「外国語教育研究センター」を設置している。ここでは、英語に限らずドイツ語、フランス語など9言語の特設科目を展開するほか、外国語ラウンジやオンライン学習による学習支援などが行われる。学習マネジメントシステム(Learning Management System=LMS)とCALLシステムを活用して授業を展開する、同センター所長の境一三教授を訪ねた。

言語学習の場は、言語使用の場 生きた音に触れる環境作りが大切

 取材で訪れた日吉キャンパスの第3校舎の教室は、CALLシステムを備え、いわゆるスクール型の机配置ではなく、ゆったりとした空間の中で、4人一組で向き合いながらグループワークを進めやすい机配置になっていた。
  「パソコンやCALLシステムは、学習の主役ではなく、あくまでも"道具"です。外国語の授業において、道具がコミュニケーションを阻害するようなことがあってはならないのです」と、境教授は述べる。言語学習の場は、言語使用の場であるとの考えに基づき、CALL教室を使おうとも、大切にしているのは「人と人との触れ合い」だ。そのため、導入している『CaLabo EX』も、すべての機能を使って授業を組み立てるのではなく、必要な機能を選んで使っている。

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境教授がよく使用するのは、動画学習ツール『ムービーテレコ』だ。「Web上の映像や音声を使用するときや、CDの音源を聴き、各自で口頭練習するときに重宝しています。「録音回収」機能を使えば、学生が録音した音声を一斉に回収することもできるので、テストにも活用しています」と使用感を話す。
  言語活動には「音」が中核となり、「人」と接することが不可欠である。教科書にあるような"お膳立て"されたような会話練習を繰り返しても、ロールプレイングにしかならず、それは現実の会話にはほど遠い。いかに初級段階から、その言語の本物の音に慣れるかが大切だと境教授は言う。それゆえに、現在、web上で得られる音声や映像などの素材は、言語学習には効果的だ。

4技能をフルに活用して 使えるドイツ語を学ぶ

 境教授がパートナーの教員とともに受け持つ経済学部1年生の「ドイツ語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」は、ドイツで発行されている外国人ドイツ語学習用テキストを使用して授業を進める。文法、読解、リスニングなどに分けて学ぶのではなく、「読む・書く・聴く・話す」の4技能を総合的に使いながらスキルを伸ばす。1年間でCEFR(ヨーロッパ共通参照枠)のA1レベル(Basic User)まで到達できることを目標としたカリキュラムを組んでいる。
  ヴィヴァルディ作曲の「四季」がBGMで流れ、ヨーロッパを想起させるような空気が作られた教室。1人1台のパソコンを用い、学生たちはLMSを立ち上げて、心静かに始業を待つ。授業冒頭、境教授はドイツ語で学生たちに挨拶し、学生たちも挨拶を返す。大学に入学してからドイツ語を学び始めた学生たちばかりだが、境教授の話すドイツ語に対して、聞き返すような学生もおらず、スムーズに会話が流れていく。
  授業はLMS上にアップロードされている小テストから始まった。学生たちは制限時間内に、次々と答えを入力していく。解答を終えた学生から正解、不正解をオンラインで確認し、間違えた箇所をその場で確認することができるようになっている。教室前方の境教授のデスクでは、『CaLabo EX』も起動しているので、座席アイコンから学生たちの学習状況が見て取れる。17名の学生全員がテストを修了すると、アルファベットの発音練習が始まる。そうしてドイツ語の音に口と耳が慣れたところで、テキストの内容に沿った質疑応答へ。
  この日のテーマは「時間表現」だった。挿し絵を見ながら、アップロードされている音声を聴き、どんな場面なのかを類推しては、境教授の質問に答えるという流れだ。単にテキストに示された表現だけを教え、覚えるのではなく、実際の生活の場面でよく使われる表現も同時に伝えられる。テキスト本文の表現中に現れた分離動詞「aufstehen(起きる)」を説明する際には、パソコンが調べ学習の道具に早変わり。学生各自にオンライン辞書をその場で引かせて、類語なども派生的に学んでいた。
  このように、4技能をフルに活用しながらテンポよく進んだ授業は、最後に各自がフォーラムにその日の授業で学んだことや何ができるようになったのかといったことを書き込んで終了となった。

学習素材となる音源を共有し より手本に近づける練習を

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 外国語教育研究センターの「特設科目」で開設されている「ドイツ語表現技法1a」も、境教授が担当している。学部不問の特設科目は、学部には設置されていないような科目や、特定のスキルや課題に重点を置いた科目などだ。「ドイツ語表現技法1a」は「発音・聴き取りレッスン」と称し、毎回テーマを設けて実践的なレッスンを行う。7回目の授業となったこの日は「発音は『かたまり』ごとに」がテーマだった。
  授業冒頭はアルファベットの発音に始まり、曜日や月名などもリズム感よく発音しながら、ドイツ語の音に慣れていく。その後はヘッドセットを装着して、音源を聴きながらの発音練習。「r」や「ch」のいろいろな発音を練習した。
  「手本の音を正確に発音しようとすることを意識してください。そして、自分の発音がどれだけ手本と違うかにも意識するようにしましょう」と、境教授は学生たちに呼びかける。発音と聴き取りに重点を置いた授業だけに、受講している学生たちも、自身の発音を手本に近づけようと熱心に声を出して練習していた。
  この日の学習のメインは、ドイツ語の歌を題材に、意味の"かたまり"を意識しながら発音すること。YouTubeにアップロードされた「Hänshen Klein」の歌の音源を聴いて前回学んだ1番を歌ったのちに、今回初めて聴く2番の書き取りに移る。境教授が発音し各自がとらえた音を文字で表し、グループごとに内容を確認し合い、正しい歌詞を探る。しばらくすると、境教授のモニタと学生各自のモニタを共有して歌詞が表示され、最終的には、意味のかたまりを意識しながら何度か音読を繰り返したところで、音源に合わせて全員で声を合わせて歌い、授業は終了した。

常にパソコンがそこにあれば、 教室は世界に開かれた空間に

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 いずれの授業においても、境教授は学生に向けてドイツ語で指示を出し、解説をする。学生たちも、質問があればドイツ語で発言し、教室内はドイツ語によるコミュニケーションが成立していた。
  「4月当初は英語や日本語も交えてコミュニケーションを取りますが、徐々にドイツ語の比重を増していきます。ドイツ語を学ぶにあたり、学生たちがドイツ語話者のコミュニティに入っていったときに、少しでも、音を聞き取り、相手の表情を見て、話している内容を感じ取る力を身につけていってほしいと考えているからです。最初はインプットを多く、次第にアウトプットもできるようにしていきます」
  アウトプットできる力をつけるためには、表現できる内容を持たねばならない。それには、テキストにある「作られた」場面の会話表現だけではなく、実際にそれらの表現がどのように「使われる」かを知り、会話で必要となる数値などのデータも準備しておくことも必要となる。テキストで学んだ表現は、実際に学習者同士で使うことによって応用が可能となる。
  「たとえば、数について学んだら、人口の聞き方の表現も同時に覚えれば、『ドイツの人口はどのくらいですか?』と尋ねることができます。それをドイツの都市に置き換えて表現することもできます。このような学習の際には、学生自身に調べさせ、ペアを組んで聞き合うことをします」
  そうした調べ学習のためにも、教室にはネットワーク化されたパソコンが常にある環境でなければならない、と境教授は強調する。WikipediaやGoogleなどを使って、まずは日本語や英語で調べ、検索結果が表示されたら、言語メニューからドイツ語を選択して、ドイツ語での表現を知る。こうして生きた情報に触れることで、学びは生きたものになる。
  「ドイツ語で書かれた文章をすべて理解はできなくても、文中から数字や分かる単語などを拾い読みして類推し、読む力もつけていきます。1年の後半にもなれば、たどたどしくも調べ学習の成果をドイツ語で発表することができるようになっていくものです」
  境教授の授業では、音声を聴く、画像を見る、小テストに解答する、調べる、フォーラムに書き込む......といったさまざまな活動がパソコンを通じて行われる。だが、パソコンはあくまでも学習をスムーズに行うための道具にすぎなかった。授業には活気があり、そこには境教授と心を通わせ、自らのスキルを伸ばそうと意欲的に取り組む学生たちの姿があった。
  「今後も必要に応じて、SkypeやTwitterなどを活用して、ドイツ語によるコミュニケーションの場を開いていきたい」と話す境教授。学生たちが学んでいる教室は、閉ざされた空間ではない。常に世界とコミュニケーションすることのできる開かれた空間なのである。

外国語学習を通じて、オープンマインディドな学生を育てたい

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外国語教育研究センター所長 経済学部・ドイツ語
境 一三 教授

 外国語教育研究センターの所長としての立場から、境教授に慶應義塾大学の外国語教育のあり方について、お話を伺った。
  「外国語とは、自分を世界に開くために学ぶものです。まずは、ことばそのものに興味を持ってもらいたいですね。そして、そのことばを話す人々の文化や社会を理解し、受け入れる姿勢が必要です。日本では、外国語としてまず英語を学びますが、英語以外の言語によるコンタクトもあることを若いうちから気づかせたいと思っています。ドイツ語は一つの例にすぎず、本学では数多くの言語を学べる環境が整っており、学生たちには英語だけでなく複数の文化や言語にオープンになれるようであってほしいと願います。今、日本社会は多言語化が進んでいます。そうした変化に対応できる能力を学生のうちに身につけていってほしいものです。いずれは社会のリーダーとなっていく学生たちですから、外国語教育を通じて、さまざまな文化や言語的背景を持つ人々とオープンに交流できる人材を育てていきたいと考えています」 

※記事中のご所属や職位は取材当時のものです。