関東学院大学工学部
パソコン学習と書き取りの組み合わせで、集中した90分
2008/12/08 掲載
パソコン学習と書き取りの組み合わせで、集中した90分。
e-Learningを活かしきるには“人間の力”も不可欠!

- 関東学院大学工学部教授・奥 聡一郎先生
教育現場においてe-Learningの導入の割合は年々高まりをみせている。独立行政法人メディア教育開発センターが今年発表した「eラーニング等のICTを活用した教育に関する調査報告書」によると、平成19年度の大学のe-Learning導入率は46.1%(前年比+5%)と過去最高を記録した。
このように、大学でのe-Learningが一般化しつつある今だからこそ、授業や講義での効果的な活用法がますます注目を集めている。
その実態を探るべく、e-Learning教材『ベーシック工業英語』(*1)の著者であり、ご自身の講義にe-Learningを取り入れている関東学院大学工学部教授・奥 聡一郎先生の講義を拝見し、お話を伺った。
90分の講義に「25分×3セット」のリズムを盛り込む
関東学院大学は、春学期と秋学期のセメスター制度(2学期制)をとっており、取材に伺った11月14日は、奥先生の秋学期の担当科目『資格英語Ⅱ(工業英語)』の6回目が行われていた。『資格英語Ⅱ』の目的は工業英検の取得であるため、講義内容もそれに特化したものとなっている。そこで、活用されているのが『ベーシック工業英語』。
『ベーシック工業英語』は、文法項目ごとの章立てになっている。今回の学習は、「Unit14:Itの特別用法」「Unit15:形容詞・副詞」「Unit16:比較」の3章。奥先生はひとつのUnitにつき25分間の学習を1セットとしており、90分の講義の中で3回セット行った。
【奥先生が実践されていたUnitの学習サイクル】
-
- 1.【講義】奥先生が、『ベーシック工業英語』のUnitの項目のひとつ「Points(解説)」を学生PCのモニターに表示しながら、このUnitで学習する重要構文について説明。
- 2.【個別学習】学生が、Unitの「Vocabulary(語彙)」「Grammar(文法)」の演習問題などを使って、各自のペースで個別学習する。その間に、奥先生は机間指導をして、学生の質問に答えていく。
- 3. 【小テスト】Unitで学習した内容を確認するための小テスト(単語5問、和訳1問、英作文1問)。学生は、PCに一斉表示された問題を見ながら、テスト用紙に解答していく。この小テストの問題は奥先生がパワーポイントで作成されている。
- 4.【採点】奥先生が一旦回収したテスト用紙を今度はランダムに配布。学生が自分以外の答案を採点することで、採点の基準(和訳や英作文の際に留意するポイント)を意識付けしていくのがねらい。
- 5.【結果表示】奥先生が、再回収したテスト用紙を集計して、結果をモニターに表示する。
e-Learningに昔ながらの学習法「書きとり」を組み合わせる
奥先生によるUnitの要点の説明が終わり、学生が『ベーシック工業英語』を使った個別学習の段階へと進むと、特異な様子が目についた。多くの学生が、持参した用紙やノートに書き取りをしはじめたのだ。
奥先生は、「e-Learning教材を使った講義でも書き取り学習が有効」と語る。 「キーボードで打ち込むだけではなかなか単語や構文を覚えられないので、昔ながらの学習法である書き取りを組み合わせています。書くということは本当に大事で、Unitごとにペーパーでの小テストをしているのも、『単語や例文をちゃんと覚えているか、訳せるか』というのを書くことによって学生に確認させるためです。こうした手を使ったチェックをしていかなければ、e-Learning教材は、ただ情報を与えられるだけのものとなってしまって効果的に使えませんし、学生も飽きてしまいます」
e-Learningに不可欠な教員と学生の“人間の力”
奥先生は、e-Learningに欠かせないのものとして“人間の力”を挙げる。学生がe-Learning教材を利用して個別学習をしている間でも、奥先生が机間指導を実践しているのは、この考えに基づいたもの。
「e-Learning教材だけだと、学生にパソコンで演習問題を解かせて終わりになってしまいがちで、教員は自分がどんな授業を展開すればいいのか非常に捉えにくくなります。私も最初の頃は本当に試行錯誤しました。そして、e-Learningにも、やはり人間の力が必要だと分かったのです。小テスト、机間指導、学生が質問をして私が答える、こういう教員と学生のインタラクティブなものをe-Learningに組み込んで、授業を構築していくことが大切だと思います」
単語が特徴的な工業英語も
「ベーシック工業英語」で分かりやすく学習できる
講義終了後、学生の皆さんに話を伺った。協力して下さった6名は、春学期の科目『TOEIC』に続いて奥先生の講義を受けたいということで秋学期の『資格英語Ⅱ』を受講したという。
Q.奥先生の『資格英語Ⅱ』を受講した感想は?
内海:春学期と比べて、単語を多く覚えるようになりました。
田辺:春は(1回の講義につき)小テストが1回でしたが、今回は3回あるので、語彙力がついて基礎能力が高まりました。
三上:事前に勉強してきたことが小テストの結果として出るので、自宅でもe-Learningで予習をする気になれます。
Q.『ベーシック工業英語』を取り入れた講義は、いかがですか?
松本:他にもe-Learningの経験はありましたが、この教材はテンポよく学習できるところがいいです。
岩瀬:これまでほとんど聞いたことのない工業英語独特の単語が出てくるのですが、Unitごとにまとめてあるので分かりやすいです。
齋藤:すごく効率がいいし、覚えやすいですね。とてもいい教材だと思いますが、授業中気を抜く暇はないです(笑)。
学生のみなさんは、90分間の講義中、ずっと集中した表情で臨んでいた。それは、一人ひとりが自発的に取り組むことのできるe-Learning教材ならではの良さと、書き取り学習や奥先生の机間指導といった“人間の力”がうまく噛み合っていたという何よりの証だ。
【インタビューに協力してくださったみなさん】
*1 【ベーシック工業英語】
2005年、奥先生と同学のリサ G.ボンド先生の監修のもと、チエル株式会社で開発されたe-Learning教材。工業英検に対応した文法項目を網羅しており、工業英語独特の単語やそれを使った例文などがネイティブスピーカーの音声付で収録されているため、資格取得に必要な英語力が鍛えられる。Web教材ポータルサイト「CHIeru.net」に対応しており、サイトに接続するだけで学内や自宅で学習できる。
【DATA】
関東学院大学工学部(金沢八景キャンパス)
〒236-8501 神奈川県横浜市金沢区六浦東1-50-1
http://kougaku.kanto-gakuin.ac.jp/
「関東学院」の歴史は古く、前身である横浜バプテスト神学校の創立は1884(明治17)年までさかのぼる。1949(昭和24)年、学制改革により旧制専門学校を母体として関東学院大学を設置。以来、現在は、金沢八景・金沢文庫・小田原の3キャンパス、5学部5研究科を持つ総合大学となっている。工学部は、その中でも、大学設置当初より開設されている伝統ある学部。
※記事中のご所属や職位は取材当時のものです。
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