小学校 フラッシュ型教材

札幌市立山の手南小学校

授業力、指導力があってこそICTは活きる

20100331 掲載


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 「学力向上」を教育目標に掲げる学校は、数多い。山の手南小は、「日常授業の改善」こそ学力向上につながると考え、わかりやすい授業の実現と指導力向上の手段の一つとして、実物投影機やフラッシュ型教材などのICTを積極的に活用し始めた。本格的に取り組み初めて一年余り、今や算数、国語、社会、英語、そして食育でも、ICTは活躍しているという。

算数の授業はICTの良さを発揮しやすい

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2年3組担任
朝倉 一民 先生

 「ICTの良さや特長を理解し、わかりやすい授業を作ること。それが教師の責任だと考えています」
  と話す朝倉先生の授業は、デジタルとアナログそれぞれの良さを活かす工夫が随所に凝らされていた。
  まず見学したのは2年生の算数で、直角三角形を学ぶ単元。授業は『フラッシュ算数』を使った班対抗ゲームからスタートした。電子黒板に表示された4枚の数字パネルを指でドラッグし、□×□=□□の数式を完成させるのだ。

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ジオボードを使った活動場面も多々。机間指導もしっかり行っていた。

 「脳のスイッチを入れるのがねらい。正しい組み合わせを探すために、子どもは頭の中で何通りもの九九を唱えます。頭のウォームアップになるとともに、九九の定着にもつながります」
  子どもたちはこのゲームが大好きで、算数が苦手だった子どもも「次は算数の時間だ!」と楽しみにするようになったそうだ。
  さらにe-Teachersからダウンロードしたフラッシュ型教材を使って、長方形や正方形の名前を復習した。
  「一度習っただけでは忘れてしまう子どももいますが、フラッシュ型教材なら大事な箇所だけを抽出して短時間で復習できます」
  図形の単元は、特にICTの良さを発揮しやすい。
  「図形を正確に黒板に書こうとするとかなり時間がかかりますが、ICTなら数秒で正確に書ける。さらに図形を変形・回転させて見せるのも簡単ですので、図形をイメージしやすくなります」

 

大事なのは、発問と指導教師の授業力が問われる

 ただし、朝倉先生はICTばかり使っているわけではない。ジオボードのワークシートに図形を書かせる作業を何度も取り入れていたし、長方形の色画用紙を切って見せ、長方形から直角三角形ができることを実感させてもいた。
  「わざとゆがんで切り、『先生、直線で切らないと三角形にならないよ!』と子どもに突っ込ませるようにしました」と授業後に聞かされたときには、その深謀に驚嘆した。
  大事なのは、デジタルかアナログかではなく、発問と指導。フラッシュ型教材を見せるときも、わざといびつな図形のフラッシュ型教材を見せて「これは長方形? 違うならなぜ?」と発問して「直角」「直線で囲まれている」といった定義をしっかり確認させていたし、授業の最後に行った図形パズルでは「これができたら小学4年生レベルだよ」と声をかけ、巧みに子どもの意欲を刺激していた。
  高い授業力を実現する手段の一つとして、ICTがある。同時にどんな教材や教具を使おうとも、授業力がなければ効果は得られない。この真理を、改めて実感させられた。

ICTで授業を改善するために
物心両面で工夫を凝らす

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新保 元康 校長先生

 「日常授業の改善にICTを役立てるには、日常的に使える環境が不可欠。そこで全教室に、実物投影機、プロジェクタ、マグネット式スクリーン、パソコンを整備しました」
  また教材共有ネットワークを構築し、市販・自作の教材などを共有フォルダに保管。教室のパソコンからすぐに教材を利用できるようにした。
  「授業研究や指導方法の改善も進めました。その一つが、年間100本の『授業道場』の実施。教師同士で日常的に授業を見せ合い、授業終了後検討会を開いています」
  この授業道場の特筆すべき点は、場面を限定した数分間の公開でもいいところだ。これなら見せる側も見る側も気軽。12月中旬時点で、既に81回実施したという。日常的に少しずつ取り組んでこそ、日ごろの授業の改善につながるのだ。
  「9割以上の子どもが『ICTを活用した授業はよくわかる』と答えています。今後も教師一人ひとりが自分の課題を持ちつつ、お互い教え合って、よりわかりやすい授業を実現していきたいと思います」

食育の授業でもフラッシュ型教材が活きていた

食育の"基礎基本"に効くフラッシュ型教材

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栄養教諭 反橋 那知子 先生

 山の手南小は、文部科学省の「栄養教諭を中核とした食育推進事業」委託研究校として、校内菜園での野菜栽培や給食とリンクした学びなど、食育にも力を入れている。そして食育の授業でもフラッシュ型教材が活用されていると聞き、2年3組の授業を拝見した。
  授業は、『小学校のフラッシュ食育』や自作のフラッシュ型教材を使った復習からスタート。野菜や食材の名前を、子どもたちは元気に答えた。
  「低学年の学習目標は、『食べ物に興味・関心を持ち、食品の名前がわかるようにする』。食育の基礎基本である食品名の定着に、フラッシュが効いています」
  とは、栄養教諭の反橋先生。今日の授業のテーマは、おせち料理。「おせち料理に何が入っている?」と担任の朝倉先生が問うと、子どもは先を争うように、くりきんとん、くろまめ、田作り、紅白なます......と発表した。おせちについて調べる宿題が出ていたとはいえ、子どもたちの詳しさに驚いた。

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 続いて、反橋先生が自作したフラッシュ型教材を使い、おせち料理の"意味"を学習。「まめにはたらくという意味があるのは?」「子どもがたくさんできるようにという意味があるのは?」といった問題に、子どもたちは「くろまめ!」「数の子!」、「数の子ってなんの卵だろう?」「どうして田作りという名前なのかな?」と、その都度発問。「昔はイワシを肥料に使っていた。前に学んだフードリサイクルと関係があるね」と、知識を関連づけさせる指導が印象に残った。

 

食への関心と理解は確実に深まっている

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朝倉先生が作った、おせちパズル。おせち料理の写真を、ワークシート上に自由に並べていく。

 給食時間も、大事な食育の機会。「大豆が変身した食べ物を探せ!」など、その日の給食にちなんだ"挑戦状"を毎日反橋先生が出しているという。
  「授業では視覚や知識を学習。ここに給食をリンクさせることで、学びに"味覚"が加わるのです」と、朝倉先生。
  また食育で学んだことが家庭での話題になっているケースもよく聞くという。学校で学んだことを家庭に返してあげるのも、食育の大事な目標だ。
  「冬休みの宿題として『おせちを食べて、感想を書いてきてください』と指示したのも、これを機会に家族でおせちについて話し合い、食"文化"について考えさせるため。一学期から学習を積み上げてきて、子どもたちの『食への関心』が高まっていると実感しています」

※記事中のご所属や職位は取材当時のものです。