セミナー・イベント開催レポート REPORT

「TEAPによる入学者選抜、CLILによる大学教育、そしてTEAPの高校英語教育に及ぼす影響」

2013年7月26日(金)に開催された「上智大学CALLセミナー」は、今年で7回目を迎えた。2014年度からすべての新入生に対して必修化されるCLIL (Content and Language Integrated Learning) プログラムと、2015年から従来型の一般入学試験に加えて導入される、アカデミック英語能力判定試験TEAP (Test of English for Academic Purposes) が講演内容の中心となり、全国の高校・大学の先生方から多くの関心と期待を集めたセミナーとなった。

*CLIL(クリル:内容言語統合型学習):教科科目を語学教育の方法により学ぶことで、効率的かつ深いレベルで修得し、また英語を学習手段として、実践力・応用力を伸ばす教育法のことで、ヨーロッパの多くの国々で取り入れられている。

*TEAP(アカデミック英語能力判定試験):上智大学と公益財団法人日本英語検定協会が、共同で開発を進めている試験で、リーディング、リスニング、ライティング(記述式)、面接によるスピーキングの4技能の英語力を測る。大学入試改革も視野に入れ、大学での学習や研究に必要とされる英語運用能力を測るための試験として注目を集めている。

「CALLのコンセプトと外国語教育の活用」
CALLシステム担当主任/外国語学部ドイツ語学科 教授 新倉真矢子先生

 

ムービーテレコを利用した授業例を紹介する新倉先生

上智大学のCALL教室の歴史は、1999年に1教室設置したことから始まった。その後、2005年には、チエル株式会社のフルデジタルCALLシステムCaLabo EXを5教室導入し、本格的な運営が始まった。CALL教室利用科目は圧倒的に語学が多いが、通訳や経済学科の経済英語、理工学部の科学技術英語などもあり、今では7教室あるCALL教室は1週間のスケジュールを見ると、ほぼフルで授業が行われている。

授業でのCALL教室活用例として、新倉先生ご自身を含む3人の先生の授業を紹介された。その中でも大きく取り上げられたのは、CaLabo EXの音声学習ソフト『ムービーテレコ』だった。『ムービーテレコ』を用いることで、インターネット上の動画を教材にしたり、DVDを授業で使いやすく分割してデータで保存できるため、身近で最新のものをすぐに教材として利用することができる。また、ヘッドセットで音声を聞き、自分の声をマイク録音できるため、シャドーイングに最適な環境を用意することもできるので、より確実にリスニング力を強化し、発音指導などを活発に行うことが可能になるのだ。

新倉先生のご発表では、CALLシステムやeラーニング教材を組み合わせることで、普通教室で行う授業より更に学習の幅がが広がる様子を確認することができた。

“Approaching English Linguistics in English through CLIL: Sophia’s Academic English Program”
外国語学部英語学科 教授 和泉伸一先生

ユーモアを交えて解説する和泉先生

参加者のTaskへの取り組みの様子を伺う和泉先生

和泉先生のご講演は、TEAPの利点とCLILの概要についての解説、そしてCLILを用いた言語学に関するユーモアあふれる授業例だった。

TEAPは上智大学と公益財団法人日本英語検定協会がおよそ4年の歳月をかけて共同で開発したもので、大学のアカデミックな場面での英語運用能力を測定するテストだ。テスト形式は、総合的な英語力を測定するために、リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4技能で構成されている。

CLILを用いた授業例として、和泉先生は「語用論」に関する授業を紹介された。例えば、子どもAとBの「うちにおいしいドーナッツがあるよ!」「いいなー」「ダメ―!!」という会話で、間違いは何かという疑問を参加者に投げかける。これがCLILにおける’Task’であり、参加者は考え、「ダメ―、というのが文脈に合わない」といった活発な意見交換が行われた(Sharing)。最後に和泉先生が意見をまとめ、解説をする(Lecture)というように、CLILにおける基本的な授業の流れを体験できたことから、参加された先生方は学生にもどった気持ちで大いに楽しまれていた。CLILを用いることによって、なぜ英語を学ばなければいけないのかという素朴な疑問は払拭され、英語を使う環境の中で自然と学び、学ぶことによって更に使うようになるという循環ができる。CLILは真の国際人を育む画期的なプログラムであると感じさせられるご講演だった。

“EAP/CLIL Lesson in Action – The Use of Multi-media in Scaffolding Critical Thinking”
言語教育研究センター 講師 逸見シャンタール先生

「ランダムペア」で会話した相手を探す参加者たち

「ランダムペア」を組む逸見先生

逸見先生の体験授業では、「スーパーヒーロー」という身近なトピックを用い、CLILのコンセプトを取り入れた授業がどのようなものになるかを体験していただいた。参加者は、授業の目的である「スーパーヒーローについて自分の考えを表現する」に向かって、聞きとりやペアワーク、配布されたプリントの問題に解答するなど、様々な’Task’に取り組むことになっているのだ。

さらに逸見先生は、自然な流れでCALLシステムの機能を取り入れ、学生が飽きずに楽しめる授業を実践された。例えば、予め作成しておいたインタビュー動画を『ムービーテレコ』で再生することで、集中して聞かせる場面や、ペアをランダムに組んで意見交換をする様子を録音、振り返って録音音声を聞かせるといった場面だ。一方、聞きとった内容をもとに、ペアで組まれた相手が誰であったかを席を立って探すことや、動画の聞きとりを確認するプリントを手元に配布し、答えを書きこませるなど、システムを使う場面とそうでない場面を巧みに切替えて、無理なく効果的な方法でCALLシステムを活用されていた。

録音した会話を聞き返す場面では、”Strange.”と苦笑いをされ、普通教室ではできないことを可能にするCALLシステムの利活用法についても実感いただけたようだった。

“The Development of TEAP and Its Influence on English Education in Japan”

言語教育研究センター 教授 吉田研作先生

 

最近の英語教育における課題事項の中に、大学入試制度がある。現在の大学入試に代わるものとして注目を浴びつつあるTEAPについて、その制作の背景と発展の様子、更には日本英語教育に与える影響について語っていただいた。

「現在のセンター試験は1年に1回しか実施されず、この1回で結果が決まってしまうため、その信頼性は高いとは言えない。また、センター試験は能力を判定する試験であるが、英語においては、高校生活を通しての習熟度を測る試験であるべきであり、現在のセンター試験ではこれを測るには適切とは言えない。既にある試験を大学入試として活用しようという話はあるものの、その試験がつくられた目的やレベルを考慮すると、どれもふさわしいとは言えないことがこれまでの調査でわかっている。一番有力とされたTOEFLはアメリカの大学に留学し、生活するのに必要な能力を判定する試験であるため、難易度も高く、受験生には大変厳しいものである。

そこで今注目を浴びつつあるのが、2015年から上智大学で一部導入されるTEAPである。

TEAPは、上智大学をはじめとし、大学に入学するにふさわしい英語力を判定するために開発された試験である。実際、既に多くの大学から関心を集め、文部科学省からも少なからず支援をいただいている。全国で運用するにはまだ時間と調節が必要である」と話された。

参加者からも、上智大学でTEAPを通した大学入試の具体例を生み出し、その例に倣うことで、高校・大学の授業の在り方や入学試験の制度をより良いものに変えて欲しいという期待が寄せられた。

今回のCALLセミナーでは、和泉先生、逸見先生、吉田先生のご講演、質疑応答は、すべて英語で行われ、参加された先生方も久しぶりに英語漬けになり、今後の授業のヒントを聞きもらすまいと、真剣にメモをとられていた姿が印象的だった。また、CALLセミナー名物の昼食時間を利用して行われる「吉研ルーム」も、多くの先生方が飛び入りで参加され、大変なにぎわいであった。

いずれの講演、体験授業においても活発な意見交換が行われ、「第7回上智大学CALLセミナー」は、大盛況のうちに終了することができた。

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