Case Studies

伝統の語学教育を受け継ぐCALL教室

2020/12/25

高大

―奈良県―
天理大学

天理大学では、世界24カ国・地域に交流協定校をもつなど、国際交流・海外留学のプログラムを充実させ、長年にわたって語学教育に力を入れてきた。CALL教室の導入から11年目を迎えた同学で、その活用方法の変遷や今後のビジョンについて伺った。

天理大学
常駐スタッフが動作確認をする様子
天理大学

天理大学
〒632-8510
奈良県天理市杣之内町1050

1925年、天理外国語学校として設立。「宗教性」「国際性」「貢献性」を3つの柱とし、社会の発展に寄与する人材の育成を目指す。2025 年に創立100周年を迎える。2020年、附属天理図書館が大学図書館ランキングにおいて全国1位を獲得している。

10年間を振り返って

 天理大学では2009年に CaLabo EX を導入、現在では5つのCALL教室が稼働している。導入からの約10年間をお二人の先生に振り返っていただいた。

 ドイツ語の授業でCALL教室を活用してきた森本智士先生は、「初習言語」に関して、語学習得に対する学生たちのモチベーションや目的意識が多様化してきたことを感じている。「近年は学生一人ひとりのニーズに合った形で、CaLabo EX の機能を使い分けています」

 また、2016年に副学長に就任した東馬場郁生先生は、現在も英語の授業を担当する。初習言語とは事情が異なることに触れた上で、次のように話す。

 「4技能が重要であることは10年前と変わりません。大きく変わったのは、急速な技術革新によって、以前は特殊な機材がないとできなかった様々なことが、今では誰でも使えるツールによって可能になったことです。CALL教室での授業はその先を行くものでなければならない。そのために求められるのは、優れた教材の開発だと考えています」

 天理大学には、2009年の導入時には1名、現在では3名のチエルスタッフが常駐し、日々の授業をサポートしている。

 東馬場先生は、次のように話す。「導入当初は、私も含め、教員たちにとって『そもそもCALL教室ではどういう授業ができるのか』という部分で発想の転換に時間がかかっていました。機能を理解したとしても、実際の授業でどう使うか、その機能を活かしてどんな新しい授業を実現するか、その発想に至るまでには苦労もありました。その過程で、常駐スタッフが授業のたびに現場に立ち、現場を媒介として使い方を伝えてくれたことはありがたかったですね。年々それが根づき、今では教員と常駐スタッフの役割分担が明確になり、効率よい運用が可能になってきていると感じています」

 時代の変化、学生たちの実態の変化に合わせてCALL教室の特性を活かした語学学習を継続するため、今後も常駐スタッフによるサポートが鍵となる。

オンライン授業を経て感じたこと

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、前期の授業は原則として全面オンラインでの実施となった。語学の授業についてもテレビ会議システム等を使ってできる限り通常の内容を実施した。

 森本先生は「文法の指導では、教材配信によって繰り返し学習できるなどオンラインのメリットがあった」としながらも、「初習言語として発音を一から指導しなければいけないところ、オンラインでの指導では限界を感じた」と話す。「発音で重要なのは口の形。ビデオ会議システムを通した映像ではスムーズに伝わらず難しかったですね」

 後期以降も、オンライン授業、対面授業のいずれにも対応できるよう授業のノウハウを蓄積していく必要がある。

 一方で森本先生が以前から考えていたというのが、CALLシステムを利用して海外とつないで行う遠隔授業だ。「海外の交流協定校と合同で行っている授業はすでにあるのですが、CALLシステムの機能を使って、語学に特化した海外との遠隔合同授業を、近い将来にできたらいいですね」今期、思いがけずオンライン授業に取り組むこととなりノウハウを得たことで、さらに可能性を感じるようになった。

 オンラインでは難しいこと、逆に、オンラインだからこそ可能なこと。これからの新しい日常の中で、それぞれの学びの在り方を探っていく。

語学教育が生み出す相乗効果

 現在、世界24カ国・地域に50数校ある交流協定校は、約2倍の100校を目指して拡大を進めている。

 学生のレベルアップについても具体的な目標を掲げており、東馬場先生は「英語においては、留学前の段階でTOEFL iBT®テストで80点前後の集団を作りたい」と話す。「しかし、そのレベルの学習に見合う教材は世の中にあまり豊富ではないのが現状です。教材を提供する教員の力量にかかってきます」

 「語学教育は本学の大きなエンジン」と語る東馬場先生。それは、国際学部で外国語を専攻する学生の教育にとどまらないことを示している。

 同学は、体育学部の海外との交流が非常にさかんなことでも知られる。例えば柔道部では、海外から毎年100名以上の選手を受け入れ、トレーニングを行っている。毎年、体育学部の数十名の学生をドイツの協定大学とケルン体育大学に引率しているという森本先生。大学全体として語学教育に力を入れることが、語学を専攻する学生以外にも大きな効果をもたらすことを感じている。「海外を経験すると、学生たちは口をそろえて『天理大学に来てよかった』と言います。まさか自分が海外で選手としてプレーできるとは思わなかったと。スポーツという強みに語学という強みが掛け合わされて、本学ならではの特色ある教育を実現できていると感じます」

 卒業後は海外を拠点として競技を続けていく選手もいるという。充実した語学教育で培った語学力、海外でのコミュニケーション力は、学生たちの目標を叶えるための強力なツールとなっている。

さらに使われる教室を目指して

 現在、5つのCALL教室の稼働率は86%となっている。東馬場先生は、稼働率の高さには満足しつつも、同時に課題も感じている。

 「利用する教員に偏りがあります。私はCALL教室の魅力を知っているので、語学関連の授業は可能なら全てCALL教室で行いたいと思っているほどですが、中には足を踏み入れたことのない教員がいるのも事実です。幅広い授業でCALL教室が使われるように、学内に向けて情報を発信する必要を感じています。また、現状ではごく少人数の授業でも1つのCALL教室を占領してしまうことがあるので、より多くの学生が利用できるよう、運用方法の見直しもできればと考えています」

 長年にわたって、CALL教室活用のノウハウを着実に積み上げてきた天理大学。今後も語学を活かして様々な分野で活躍する学生たちの学びを支えるため、CALL教室の活用の幅を広げていく。

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