Case Studies

男子も女子も社会科が大好き!学ぶ楽しさを実感させる方法とは?

2008/07/24

小中

兵庫県たつの市立揖保小学校

【フラッシュ型教材実践レポート】

既習事項の復習と、授業のポイント定着に効く!

清久先生.jpg

清久先生

 「フラッシュ型教材を使うと、知識の定着率が目に見えて上がります。面積の求め方を学ぶ単元では、フラッシュ型教材を使った場合と使わない場合とでテストの平均点に約4点の差がつきました」

 と、フラッシュ型教材の効果を実感をこめて語る、清久先生。清久先生はさまざまな教科でフラッシュ型教材を活用しているが、今回は社会科での活用方法を見せていただいた。

「今日の授業は、江戸時代について学ぶ単元の1時間目。フラッシュ型教材は、授業の最初と最後に使います」

 まず導入では、卑弥呼や鑑真、足利義満、織田信長といった、これまでに習った人名を答えるフラッシュ型教材を使用。同じ問題を、異なる出題方法で繰り返し答えさせるのがポイントだ。

●1回目:歴史上の人物の写真(絵画や像)と名前が入ったフラッシュ型教材を見せ、名前をすばやく答えさせる。

●2回目:名前を隠し、写真だけ見て答えさせる。

●3回目:写真の一部だけをスクロールやアニメーションで見せて、名前を答えさせる。

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授業の導入で使った、人名を答えるフラッシュ型教材。この目だけを見て、子どもたちは「鑑真!」と即答していた。

「まず名前入りで見せることで、忘れていた子どもたちの記憶を掘り起こす。そして2回目で、今回のねらいである名前の定着を図る。そして3回目はゲーム的な要素を取り入れることで、子どもが飽きないようにしています」

 同じ問題を繰り返しテンポ良く答えることで知識の定着を図るのが、導入のねらい。一方、授業の最後で使うフラッシュ型教材は、使い方やねらいが異なっている。

「”家光が大名に義務づけた制度は?””大名の妻や子はどこに置かれた?”といった、今日の授業の大事なポイントを、フラッシュ型教材で提示して答えさせます。導入ではポンポンと出題しますが、ここではゆっくりと表示し、反射的ではなく、今日の学びを反芻しながら答えさせます」

 目的や内容に合わせてフラッシュ型教材を上手に使い分け、知識や学びの定着を図っているのだ。

知識がつながる、歴史を実感する醍醐味を体験させる

まとめのフラッシュ型教材.jpg

授業の最後では、フラッシュ型教材でポイントを出題。ちなみにこの教材は、少しアレンジした上で次の授業の導入でも使う。

 フラッシュ型教材で、知識や既習事項は定着できる。しかし、年号や名前をただ覚えるだけでは歴史を学ぶおもしろさを知ることはできない。また、単純な暗記作業は、社会科嫌いを生みやすい。
ところが清久学級では、「社会科を嫌い」と答える子どもはゼロ。26名中21名が「社会科が好き!」と答え、歴史の本を好んで読んでいるという。さらに驚かされたのが、子どもたちの発言や観察眼の鋭さだ。この日の授業でも、「すごい!」と驚嘆させられたシーンが何度もあったのである。

●目を閉じているから……鑑真!
授業の導入で、フラッシュ型教材で人名を答えていたときのこと。ある人物の「目」だけが表示されると、子どもは即座に「鑑真!」と答えた。清久先生が、「よくわかったね。なんで目だけで鑑真とわかったの?」と問うと、「だって、目を閉じてる写真だったから。鑑真は何度も中国に渡ろうとして、目が見えなくなってしまったから」と、的確に理由を説明した。

プロジェクタ上で発見を解説.jpg

プロジェクタで映し出された教材を指し示しながら、自分の発見を発表する。「将軍は黒い服を着ているけど、同じように黒い服を着てるのに頭を下げてる人もいる。誰だろう?」という鋭い発見も。

●修学旅行の思い出が、学びに直結
大名たちが将軍家光に新年参賀する様子を描いた絵を観察していたときのこと。「将軍と大名とでは、着ている服の色が違う。大名同士でも、色が違う」ことを発見した子どもに、「大名の間でも、位に違いがあるみたいだね。次の時間で詳しく勉強しようね」と清久先生が声をかけると、ある子どもがパッと手を挙げてこう言った。
「知ってるよ、外様とかでしょ?」。「まだ習ってへんのに……なんで知ってるん?」と驚く清久先生に、子どもは「だって修学旅行で二条城行ったとき、先生がチラッと話してくれたもん」と得意そうに答えた。

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机間指導時には、どの子がどんな発見をノートに書いているかをチェック。「○○さんは、別な発見をしていたね?」と指名し、発表の機会を与えていた。

●学び同士がリンクする!
同じく、大名にも位の違いがあったことを学んでいたときのこと。「服の色を変えることで、位の違いをハッキリ分けていたんだね」と清久先生が解説していると、ある子どもがハッとした表情で興奮気味に叫んだ。「それって、聖徳太子の冠位十二階と同じだね!」
周りからは「おおお!」という、感嘆と賞賛と驚きが入り交じったどよめきが起こった。

 子どもたちは学んだことや聞いたこと同士を関連づけて、考える力を持っている。バラバラの知識ではなく、知識同士をリンクさせて歴史を俯瞰している。「点」ではなく「線」で、歴史をとらえているのだ。これこそ歴史を学ぶ醍醐味であり、必要不可欠な力だが、いったいどういう指導をすれば、こんな子どもが育つのだろうか?

「子どもたちが鋭い発見や考察をしたときは、『すごいね!』と全力で褒めています。すると子どもたちは、『次はボクが私が、もっとすごい発見をして先生を唸らせてやるぞ!』とやる気をかきたてられ、頑張るのです。
こういう良いサイクルができると、子どもたちは教師の予想を超える発見や考察をポンポン出し始めます。しかし、今日の『聖徳太子と同じだ!』には、びっくりしましたよ。そこまで考えが広がるとは、全く予想してませんでした。私の完敗ですね(笑)」

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 特定の「歴史好き」の子どもだけでなく、クラス全体からまんべんなく鋭い発言や発見が飛び出すのが、清久学級の特徴だ。

 「私も歴史が好き」という清久先生は、歴史を身近に感じさせる小話をよくしているとか。この日も参勤交代の解説をしながら、「実はみんなの通学路は旧街道と言って、江戸時代にはあの道を大名行列が通っていたんだよ」と披露。それを聞いた子どもたちは、「あの細い道を大名たちが?……すごいなぁ!」と驚き、興奮していた。子ども達の目には、見慣れた通学路を「下にぃ下にぃ」と進む大名行列の姿が、時空を超えて見えていたに違いない。

 そして、歴史を連続線上でとらえる指導や声かけも、大事にしている。たとえば今日の授業では、「家光は『生まれながらの将軍』だと宣言したけど、家光より前の将軍は誰だったかな? 家光の祖父である家康は、家光が将軍になったとき生きていたのかな?」と発問し、徳川家の血のつながりや時間の流れを認識させるようにしていた。

「歴史は、知識と知識が『つながる』のがおもしろい。知識同士がつながって新たな発見が生まれたり、今まで当たり前と思っていたことが覆されるのが、知的好奇心を刺激する。その楽しさ、おもしろさを子どもたちに伝えたい。
実は私自身も、授業を心から楽しんでいるんです。こちらのねらい通りに子どもが答えてくれたとき、そしてこちらの予想を上回る発見をしてくれたとき、『子どもってすごい!』と感動しますよ。
子どもに負けない良い授業をして、歴史好きな子どもたちを育てたい。将来教え子たちと歴史談義をするのが、私の夢です」

 筆者も清久先生の授業を拝見して、「教育の力ってすごい! 子どもってすごい!」とあらためて実感した。清久先生の授業で身につけた歴史を俯瞰する力や姿勢は、中学や高校で世界史や日本史を学ぶ際に必ず役立つはずだ。清久学級の子どもたちがうらやましいと、心の底から思った。

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