Case Studies

『見せて教える社会科』で社会科の醍醐味が存分に味わえる!

六ヶ所村立南小学校では、昨年からタブレットPCを導入し、電子黒板やデジタル教科書などのICTを活用した授業を実践している。今回は、5年生社会科の授業をレポートする。

六ヶ所村立南小学校
下北半島の付け根、太平洋に面する六ヶ所村。南小学校は2013年に合併で誕生した、全校生徒79名の小さな学校だ。だがICTの導入には力を入れており、全教室に実物投影機と電子黒板がそろい、タブレットも1学年分導入して、積極的に活用している。
〒039-3215
青森県上北郡六ヶ所村大字倉内湯ノ沢12-8
TEL0175-73-8835

『見せて教える社会科』でグラフを少しずつ見せて予想させる

 この日の授業では、『見せて教える社会科』を使って、「予想」させる場面が何度も訪れた。その手法も卓越している。まずは「国産材と輸入材の消費量の変化」のグラフを使って予想する活動だが、六ヶ所村立南小学校の川越俊和先生は、グラフが真っ白の状態から子供たちに予想させ始めた。

 「1960年では、国産材と輸入材、どっちの消費量が多いと予想する?」

 挙手でサッと回答させると、意見はほぼ半々。グラフを表示して正解を見せると、国産材が多い。すると川越先生は、あえてこう発言した。

「やっぱり食べ物と同じで、国産がいいよね。今後も国産材の消費量が増えていくんだよね?」

 これに子供たちは「違うと思う!」と食いついた。その通りで、グラフを10年ごとに少しずつ見ていくと、80年には輸入材が逆転した。「ほらね」と得意げな子供たちに、川越先生は揺さぶりをかける。

 「では、2000年以降も当然輸入材が増えていくよね?」と、グラフを表示していくと、なんと輸入材も減少し始めた。「あれ? なんで?」とざわつく子供たちに、「では、国産材はどうなったかな?」と追い打ちをかける。

 「輸入材が減った代わりに、増えたと思う」と、気を取り直して予想する子供たち。だが、グラフを表示すると、国産材も減少。「なんでー!?」と、悲鳴にも似た声が上がり、子供たちは首をひねった。この場面だけでなく、子供たちが「なんで!?」と驚くシーンがたくさんあった。

生徒たちに予想をさせ、少しずつグラフを見せながら種明かし

 授業の終盤、「林業で働く人はどのくらいいると思う?」と、川越先生は提起した。「少ないと思う! おじいちゃんばっかりじゃないかな。農業もそうだったから」「農業や漁業と同じで、林業も後継者不足に悩んでいると思う!」と、瞬時に反応する子供たち。既習事項とリンクして、「知見をつないで」考えていた。

 ここで、『見せて教える社会科』が再び登場する。使用するのは、「林業で働く人の数の変化」のグラフだ。ただし今回は、1975年のグラフだけ表示したデジタルワークシートを子供たちのタブレットに配布した。「この後どうなっていくか、続きを予想して書きましょう」と指示をすると、子供たちはタッチペンを使って、棒グラフをすいすいと塗り書きを始めた。

 子供たちのタブレット画面を電子黒板に映して一覧した川越先生は、「大きく分けて、2種類の予想に分かれていますね」と総括した。A「減り続ける」とB「一度減るが、近年増加に転じる」の二派だ。「なぜそう予想したのか、答えてください」と指名すると、両派から鋭い意見が出された。

 A派「農業や漁業では、高齢化が問題になっていた。林業も同じように高齢化が進み、働く人が減っていると考えた」

 B派「さっき見たグラフでは、輸入材が減少していた。国産材が盛り返したのではないか。だから、林業で働く人も増えたと思う」

 どちらも、当てずっぽうではなく、論理的な発言だ。聞けば川越先生は算数が専門で、算数の授業でも「根拠を持って、論理的に説明しよう」と指導しているという。

 意見が出そろったところで、種明かし。5年ごとに少しずつグラフを見せながら、「自分の予想と比べてみて」と川越先生は投げ掛ける。子供たちは、自分のタブレットと見比べながら、一喜一憂していたが…。正解は、A「減り続ける」だった。「当たった!」と小躍りせんばかりに喜ぶ子供と、がっくりと肩を落とす子供の対比が、印象的だった。

これが、社会科の指導のポイント!そして、ICTの良さは…

 「予想する楽しさを、子供に体験させたい。当てずっぽうで予想するのではなく、きちんと理由つきで予想しようと指導しています。これなら予想が当たってもハズレても、『なんでだろう!?』という驚きが強く印象に残り、学びが定着します。そして、定着した知識を活用できるようになるのです」と、川越先生は予想させる活動のコツを語った。ではなぜ、予想する活動をたくさん取り入れるのだろうか。

 「高学年の社会科では、自分の身近にはないことを学びます。予想させることで、自分の身に置き換え、自分の問題として考えさせる。それが社会科への興味を高めるし、自分で考え、判断し、行動する力、社会へ参画する力を養うと考えています」

 江渡敦子校長も、そんな川越先生の姿を見て「川越先生は、良いお手本になってくれています。ICTの効果がある場面で、効果的に使っています。他の先生方も、頻繁に川越先生の授業を見学していますよ」と、目を細めていた。

授業の流れ

1 前時の振り返りと予想

・前時で学習した「天然林」の働きを発問して口頭復習させる。
・本時で学ぶ「人工林の働きは?」と予想させる。

2 人工林を育てる手順を予想する

・一人1台のタブレットPCに、デジタルワークシートを配布。人工林を育てる手順の写真(植林、枝打ち、間伐など。作業名は書かず)を、順番を予想して並べ替える。

3 デジタル教科書のインタビュー動画を見る

・人工林の育て方についてのインタビュー動画を鑑賞する。

4 『見せて教える社会科』で予想する

→詳しくは、本文(ア)へ

5 タブレットPCに、気づきを書き込み、発表する

・「国産材と輸入材の消費量の変化」のグラフを貼り付けたデジタルワークシートを、タブレットPCへ配布。気づいたことをタブレットに書き込み、発表する。

6 『見せて教える社会科』の別のグラフで、再び予想する

→詳しくは、本文(イ)へ

7 子供たちに、今日の授業をまとめさせる

・「どういうことがわかりましたか?」と発問し、子供たちに答えさせる。その意見を集約し、板書する。

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