Case Studies

自分でグラフを操作し、読み解く力を伸ばす

三股町立三股西小学校の渡邉光浩先生は、『小学校の見せて教える社会科』を子供たちのタブレットPCに入れ、さまざまなグラフを読み解かせている。そのねらいや指導方法を伺った。

三股町立三股西小学校
宮崎市から電車で約1時間。西に雄大な霧島山を望むのどかな町ながら、全校生徒約770名と大きな小学校。町を挙げてICT整備にも力を入れており、各教室に実物投影機、デスクトップPC、大型テレビが常設されている。
〒889-1907
宮崎県北諸県郡三股町花見原11−1
TEL0986-52-6655

『見せて教える社会科』を一歩進めて活用

 社会科では、資料の読み解きが重要な活動である。統計グラフや図表、写真や絵巻物など、さまざまな資料を子供たちに読み解かせ、単元のねらいに迫らなければならない。しかしその情報量は膨大で、全員にしっかりと読み解かせるのは容易なことではなく、先生方の悩みの種になっている。

 この課題を解決するために開発されたのが、『小学校の見せて教える社会科』だ。見せたい箇所だけを大きく映し出したり、グラフを一つずつ表示したり、何年かごとに見せるなど、読解しやすくなる機能を搭載している。基本的には電子黒板や大型テレビで教師が提示するためのデジタル教材だ。しかし三股西小の渡邉光浩先生は、さらに一歩進めて、この教材をタブレットPCに入れ、子供たちに読み解かせている。

図1 インターネットの普及率の変化

タブレットPCでグラフを操作し、読み解いていく

 この日の授業は、「わたしたちのくらしを支える情報」の小単元「情報化社会を生きる」だった。「私たちの身の回りには、どんな情報機器があるか」「情報ネットワークとは何か。私たちのくらしで、どう役立っているか」を学習した後、『見せて教える社会科』を使ったグラフの読解に入った。

 読み解くのは、「インターネットの普及率の変化」(図1)だ。①インターネットの利用者数②人口に対する普及率③従業員100人以上の会社での普及率の三つのデータが、一つのグラフにまとめられている。

「このグラフから読み取ってほしいのは、次の3点です。

①3項目とも昔に比べて増えている

②しかも短期間に増えている

③会社での普及率がほぼ100%になっていること︱です」と、渡邉先生は言う。

 子供たちは二人一組になり、慣れた手つきでタブレットを操作し、グラフを表示した。すぐに読解活動に入るのかと思いきや、まずは「グラフの基本」をみんなで押さえることからスタート。

 「グラフの表題は何ですか?出典は?」

 「横軸、縦軸は何を表していますか?」

 「利用者数を表す縦軸は、右と左、どちらですか?」

 読解を重ね、「グラフの基本」は身についているとのことだが、複数のグラフが盛り込まれている今回は、あえて丁寧に確認していた。

 「では、タブレットでグラフを見て、気づいたことを話し合いましょう」

 渡邉先生が指示すると、子供たちは待ってましたとばかりに、顔を寄せ合ってタブレットをのぞきこんだ。グラフを一つずつ表示してじっくり観察する子供もいれば、2年ずつ時系列で表示させて変化を読み取ろうとする子供もいた。

 「操作方法が直感的で、とても簡単ですから、子供もすぐ使いこなせるようになりました」と渡邉先生は笑みを浮かべる。

読解にかけた時間は5分程度と短かったが、子供たちはたくさんの事柄を読み取り、発表していった。

 「人口に対する普及率が急激に増えています。98年には17%くらいだったのに、10年後には90%近くまで急増していました」

 「利用者数も、98年から12年にかけて、5倍以上に増えています」

 「働く人が100人以上の会社の普及率が、6年ほどでほぼ100%になっています。会社にとって、インターネットは不可欠なんだなと思いました」

 渡邉先生のねらい通りに、短時間でしっかり読み解けていた。普段から鍛えられている証拠だろう。

デジタル教材を子供に操作させるねらいは?

 教師の提示用に作られた教材を、なぜ子供自身に使わせるのか。渡邉先生は、そのねらいをこう語る。

 「自分でグラフを操作し、わかりやすいように工夫して読み解くという、能動的な姿勢と力を身につけてほしいからです」

 そのために、次のような指導を行っているという。

「まず、”変化”に注目させます。どこが変化していて、どこが変化していないか。変化しているなら、どこがターニングポイントになっているか、どのくらい変化しているか。グラフを経年で少しずつ表示するなどして、変化を読み取るように指導します」

 ここまでは、グラフを「読む」指導だ。加えて「解く」指導も行う。

 「『見せて教える社会科』は、一つの図表にグラフが複数盛り込まれている場合、特定のグラフだけを表示することができます。そこで、グラフの表示を切り替えて、どのグラフ同士が”連動”して変化しているかを考えるよう指導しています。そして、なぜ連動しているのか、その理由は何かについて考えを深めるようにしています」

 たとえば今日の授業でも、「会社での普及率は、すぐ100%近くになった」という事実を”読み”、そこから「会社にとってインターネットは必要不可欠の存在なんだ」という”解き”につなげていた。

 「学級の子供たちは、グラフが好き。グラフの面白さ、そして社会科の面白さを実感させたいですね」と渡邉先生。

 「わかりやすいように、教師が提示する」から一歩進めて、「わかりやすいように、子供自身が工夫して表示する」。その結果、情報を取り扱う力、読み解く力がさらに伸びるのだ。

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