Case Studies

遅延のない動画で理解度を高めるPC実習室とGIGA端末との併用に期待

―石川県―
金沢市立工業高等学校

7クラスのPC実習室に65台のノートパソコン。さらには生徒1人1台パソコンが整備された金沢市立工業高等学校。CaLabo® LXやCaLabo® Onlineを軸に円滑なICT教育を推し進めている。

遅延のない動画で理解度を高めるPC実習室とGIGA端末との併用に期待
金沢市立工業高等学校

金沢市立工業高等学校
〒920-0344 石川県金沢市畝田東1丁目1番地1

創立94年。「ものづくり」の感性と工業の基礎・基本を身につけた、地域産業の期待に応える人材を育成している。機械科、電気科、電子情報科、建築科、土木科の5つの学科があり、水球部、相撲部はインターハイや国体で優勝するなど、スポーツがとても盛んだ。また、資格取得や課題研究にも力を入れている。

生徒側のPCに動画を転送する際の遅延が課題

 石川県金沢市内で唯一の市立高等学校である金沢市立工業高等学校は、その名の通り工業系の5つの専門科(機械、電気、電子情報、建築、土木)からなる地元でもユニークな教育機関だ。生徒数は700名を超え、卒業生の6割以上が就職の進路を選ぶように、地域産業の期待に応える人材育成が持ち味の伝統校だと言える。

 その独自の立ち位置から、平成元年より教育用ICT機器の導入に積極的だ。今やデスクトップPC40台を完備する実習室が3クラス、20台を完備する実習室は4クラスと充実した設備を構える。

 当時を知る同校の電気科・教務部情報教育を担当する西野和美先生は、「ケーブル剝き出しのビデオ装置などハード制御によるPC実習室は30年ほど前から存在していました。また、以前よりソフトによるビデオ編集やコンテンツ制作を始め、卒業記念DVD等を制作してきました」と話す。

 ただ、課題もあった。「PC実習室のネットワーク制御がハードからソフトへ段階的に移行するのに伴い、生徒PCに動画を画面転送する際の遅延が問題となりました。先生の説明がリアルタイムにPC画面に投影されないと、生徒の関心も作業も途切れてしまいます」(西野先生)

 前述のような悩みを解決するソフトウエアがCaLabo®LXだった。平成30年、その効果を確認するため、西野先生は同システムを導入する近隣の大学へ出向き、画面転送の様子を現場で確認し、これなら問題ないだろうと実感したという。同じタイミングで生徒端末管理のためのWinKeeper™も採用した。

 CaLabo®LXの導入から2年程が経過し、その使い勝手について電子情報科を担当する前田朋哉先生は「プラスしかない」と評価する。「クイズ形式での小テストの機能を活かした〝仕掛け〟はもとより、画面制御で生徒の手を止めさせたり先生からのファイル転送でアイデアを共有するといった飽きさせない工夫が施せます。PC40台と生徒40人を先生1人でコントロールするのは至難の業です」と話す。

 「プログラミングの授業では、先生のPC画面を各生徒のPCに映し出し、コードを打ってもらいます。生徒に話を聞いてもらいながら都度操作を繰り返す。これを最大40名で演習します。プログラミング言語などコードを説明する際、教室の後方にいる生徒にとってプロジェクターの投影では理解が難しいはず。デスクトップPCは大型モニターを備えており、一つのモニター内で先生と生徒の画面が収まるため、視線移動が少なく済みます」と前田先生は語る。

 CAD(コンピュータ支援設計)の授業でも、リアルタイムの画面転送は欠かせない。図形の単点や交点など、画面を拡大・縮小しながら操作を説明し、2D・3Dの立体的な思考で図面を描いていく。画像や映像を駆使した授業は、西野先生のこだわりでもある。

WindowsのノートPCを1人1台端末に

 令和4年1月には市内の高等学校でいち早く生徒1人1台のGIGA端末配布を実現した。採用したのはWindowsのノートPC。「既存端末との親和性と、卒業後の利用を想定した」と西野先生は経緯を説明する。そして、CaLabo®Onlineも同時に導入した。これまでPC実習室でCaLabo®LXを利用し、その機能の利便性を実感したことを評価。加えて、CaLabo®OnlineはCaLabo®LXの機能をウェブブラウザベースでも行えるため、通常の教室で小テストなどをオンライン授業に使用できる点も魅力と捉えた。「CaLabo®LXで利用していた生徒画面のモニタリングや操作ロック、先生画面の転送といった機能は、GIGA端末を利用する際にも授業の円滑な進行に必須だと考えています」(西野先生)

 本格的なGIGA端末の活用はこれからだが、想定するプランはいくつもある。3年生が1年を通じて進める課題研究は先生との進捗管理を含めGIGA端末で完結する。外国語のリーディングでは録音データを、保健体育ではフォームの見直しや動画によるレポートを提出するのに用いる予定だ。

 他にも、国語や社会など普通教科の授業における課題配布やアンケートの回答に利用することも視野に入れている。工業科の専門的な授業はPC実習室を用い、基礎的なPC操作やOfficeアプリはGIGA端末で習得するといった併用で、それぞれのメリットを活かした取り組みに同校ならではの教育の充実への期待が膨らむ。

地域に貢献する学びの園で社会で活躍する人材育成

 先生側の端末も、校務と授業を兼ね備えるマルチ機能のノートPCを1人1台導入。PC実習室のネットワークもクラウドで連携し、いつでもすぐに使える環境を整えた。

 GIGA端末によって、学校外での活動にも幅が生まれることも期待されている。「昨年度、市内の小学校に訪問し、小学2年生100名のプログラミング授業を当校の生徒が担当しました。保護者を含め多くの方に喜ばれました。生徒にとっても教えることの難しさを実感できた貴重な体験だったと思います。今後は生徒がGIGA端末を持つことで、新たな学習機会につながればと思っています」(西野先生)

 同校では数年前に金沢のローカル鉄道である北陸鉄道から、浅野川線と石川線の発車メロディーを作ってほしいとの依頼を受けた。生徒が現地に出向き、駅周辺の雰囲気に合わせたメロディーを考えた。発表時には、実際の車両にプロジェクションマッピングを投影し、沿線の鉄道模型を作り、地元を盛り上げた。こうしたフィールドワークにGIGA端末を使い校内のPCを連携しながらプロジェクトを推進することも想像できる。ICT機器の有機的な活用で新たな発想を育むことを西野先生と前田先生の2人は望む。社会に巣立ち活躍する人材育成とともに、地域に貢献する学びの園である役割を今後も担っていく。

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