Case Studies

『CaLabo LX』は、活用するほどアクティブ・ラーニングへの効果が実感できる

『大学教育改革』を支える学修環境

―広島県―
県立広島大学 庄原キャンパス

県立広島大学は、文部科学省の2014(平成26)年度「大学教育再生加速プログラム」に選定され、現在、全学的にアクティブ・ラーニングを推進中だ。その学習環境整備において『CaLabo LX』を導入し、「授業が興味深くなった」と学生から好評を得ている。今回は『CaLabo LX』や『S300-HD』を活用した授業を訪問し、導入理由や活用法、今後の課題などを伺った。



県立広島大学 庄原キャンパス
〒727-0023 広島県庄原市七塚町5562
TEL 0824-74-1000

2005年開学。県が設立した大学として、地域に貢献する「知」の創造・応用・蓄積を図り、「地域に根ざした、県民から信頼される大学」をめざす。また、主体的に考え、行動し、地域社会で活躍できる実践力ある人材を育成するとともに、地域に根ざした高度な研究を行うなど、その存在意義を発揮し、各界からの評価を高めている。

アクティブ・ラーナー育成のためグループワークに適したシステムを導入

 県立広島大学は、「大学教育再生加速プログラム」のうち、アクティブ・ラーニングのモデル校として選定され、全学でアクティブ・ラーニングを推進している。取り組みの特徴は、教室外で行うフィールドワークなどの「行動型学修」と、教室内で行うディスカッションなどの「参加型学修」を組み合わせた「能動的学修」を、学士課程教育に計画的に導入して教育改革を進めるというものだ。これにより、幅広い教養と高度な専門性を備え、生涯にわたり学び続ける自律的なアクティブ・ラーナーの育成をめざしている。

 学長補佐の馬本勉教授は、「能動的学修を推進するために、それに適した学修環境を3キャンパス同時に整備しました」と語る。整備にあたり、グループワークやディスカッションを積極的に取り入れ、学生が相互コミュニケーションにどんどん参加するような授業スタイルを実行するには、どういった学修環境にすればよいかを、3キャンパスを越えて、語学の教員が協議した。

 そして、「机と椅子を可動式にする、学生に各1台のノートパソコン型タブレットを使わせるという環境整備は、今はどこの大学でも進んでいると思います。では、その新しい教室にどのような制御システムを搭載していくかを考えたときに、グループワークに適したシステムで導入事例も多い『CaLabo LX』『S300-HD』を導入しました。決め手は、グループワークへの展開がしやすく、学生相互のコミュニケーションが図れる点など、私たちがこれから推進したいことに合ったシステムだと思ったからです」と導入理由を説明する。

 2017年後期からは、大改修された新しいCALL教室が使われるようになった。

音声ファイルの配布が簡単になり学生もリスニングを楽しんでいる

CALL教室に3台設置している大きなディスプレイで、発表の残り時間を知らせる。

 河村和也准教授の授業「EnglishⅡ」では、2017年後期より『CaLabo LX』が大いに活用されている。「授業に『CaLabo LX』を使ってから、『授業が興味深くなった』と学生からの評価が格段に上がりました」と、河村准教授は笑顔を見せる。

 実際に、新CALL教室で行われた河村准教授の「EnglishⅡ」の授業を訪問した。まず1、2年次の共通英語科目で必ず行う「Reading Log」を元に1分間話をさせる。「Reading Log」は、各学生が図書館で自由に選んだ英語の本を読み、それに対してコメントを書いてくるものだが、授業では要約や自分の感想などを近くの学生に話すことにしている。ここでは大きなタイマー表示をして、残り時間を提示する。学生が時間を意識して話すようになり、意外にも効果が大きいという。普段はここで小テストがあり、『CaLabo LX』を利用し、小テストの答えをプレゼンテーションソフトで用意しておいて提示するなど、文字情報の表示に活用している。

 この日の授業のテーマは、誰もが知っている英語のクリスマスソングだ。まず、授業で行うことをスクリーンに写し、学生と課題を共有する。今回のタスクは次の4つだ。

 Task 1: Fill in the blanks

 Task 2: Check the script

 Task 3: Solve the four problems (in group)

 Task 4: Report your ideas

 Task 1は、歌詞がところどころブランクになったプリントに、学生が英語のクリスマスソングをリスニングして書き込んでいくというタスクである。学生には8分間が与えられ、各自が河村准教授から配布された音源でリスニングを開始した。

 「整備前の教室では、あまり英語の音声聞き取りをさせていませんでしたが、CALL教室を新たにしてからは、一人ひとりに音声ファイルの配布が簡単にできるようになったので、学生それぞれのペースでリスニングが可能になり、英語教育の効果が高まったと思います」と河村准教授は評価する。さらに、「リスニングに苦手意識を持っている学生も多いため、少しでも触れてもらうことが大事だと考えています。そのためにも『CaLabo LX』の導入は意味があったと感じています」と語る。

授業で行うことをスクリーンに提示し、課題を共有する。
学生に8分間を与え、各自で曲をリスニングさせる。

グループを組む時も平等でランダム

 Task 2で歌詞を読み解く前に、河村准教授は学生に3つの質問を投げ掛けた。

 河村准教授は「アナライザー機能」を活用し、学生の回答をすぐにグラフ化して提示する。これは学生にとても評判のよい提示方法だという。「挙手を求めるより、システム上で回答を得て、すぐに全員の意見がデータとして見えるのがいいですね。学生もすごく興味を持って参加しています。もっと活用したい機能の一つです」と話す。

 そして、グループワークで英語の歌詞を読み解いていく。今回、4人のグループを6つ作るにあたり、河村准教授はここでも『CaLabo LX』を使い、瞬時にランダムなグループを作ってグループワークをこれで進めるように指示する。

 「学生たちにグループを作らせると、いろいろな思惑があって時間がかかってしまうので、システムに決めさせるようにしています。システムが決めると平等なので学生にも評判はいいですし、スムーズに進みますね」

 グループワークでの課題は、「歌詞のその部分にはどのような意味が込められていると思うか?」「歌詞のその部分を日本語にどう訳すか?」「全体を通じて意味のわからないところがあれば、グループで話し合い、どう解釈したか?」など。学生たちは25分間が与えられてグループワークで課題を解決し、その後、各グループが発表していく。

グループワークのグループ作りは『CaLabo LX』で行う。ランダムで平等なので、学生にも受け入れられている。
『CaLabo LX』がランダムに決めたグループを作るため、学生たちは席を移動する。
グループワーク中の学生たち。
「アナライザー機能」を活用し、学生たちの回答をすぐにグラフ化。

チャット機能を振り返りで活用し全員でコメントを共有

 最後に、河村准教授はここでチャット機能を活用し、「授業の振り返り」が行われた。「『CaLabo LX』のチャット機能は、授業の振り返りに使われることを想定していなかったかもしれませんが、私はグループワークを解除してチャットボードを起動し、授業の感想を入力してもらいます」と河村准教授ならではの活用方法だ。そして、学生からの”I enjoyed this class.”というコメントを見て目を細めていた。

 1、2年次の学生が全員履修する共通英語科目について、河村准教授は「この学部は理系ということもあり、英語が得意という学生は必ずしも多くありません。ですから、英語に親しみを持ち、英語を自分でも学び、調べる手がかりを得ることを目的としています」と述べる。学生が英語に親しみを持てるように、河村准教授は教科書を用意せず、今回のような有名な英語のシーズンソングや、著名人の英語スピーチなどを題材にした自作のプリントで授業を展開している。

 「学生たちは専門課程に進むと、当然ですが英語の論文を読み、英語で発表したり論文を書いたりします。そこにつなぐ意味でも『英語は嫌だ』と拒否感を抱かせないことが大事です。そのために、アクティブ・ラーニングやグループワークは必要で、『CaLabo LX』はそれを興味深く、面白くサポートしてくれるという意味で効果的だと感じています」

知識・技能+αを求められる時代『CaLabo LX』を活用し、能力を高める

 「今、世の中が大学や学生に、知識・技能+αを求めるようになってきています」と語るのは馬本教授だ。「例えば、主体性や協働性、判断力、思考力、表現力など、座学やパソコンに向かっているだけでは得られない能力です。そのため、対面の授業やアクティブ・ラーニングが必要になってきました。今までのeラーニングの利点と、アクティブ・ラーニングを効果的に進めることのできるスタイルを考えて導入したのが『CaLabo LX』『S300-HD』なので、今後もどんどん活用の幅を広げていきたいと考えています」と語る。

 河村准教授も、3台の大型ディスプレイを有効活用し、ポスターセッション形式で3人同時に並行して発表させるなど、発表・プレゼンテーションや相互評価の機会を多く学生に持たせることを考えているそうだ。

 さらに、馬本教授は「『CaLabo Bridge』と『CaLabo Language』の活用」も今後の課題と捉えている。「学内はもちろん、学外からアクセスして使えるようにしたいと思い、研究中です。よくできている仕組みだと思うので、ウェブに載せる教材や資料を作成しながら、私たちが地道にトライしていくことが大事だと思っています」と話してくれた。アクティブ・ラーニングの推進に注力する教授たちの指導により、県立広島大学では、知識・技能に+αを持つアクティブ・ラーナーが育っていくに違いない。

教室内には前面のスクリーンと、3台の大型ディスプレイを配置。それぞれに異なる入力ソースを提示できる。
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