Case Studies

語学は1対1の対話が理想。それを補うものとして最も優れているのがCALLシステム

2008/09/18

高大

関西地区には、コンパクトな組織を保ちながらユニークな教育で実績を上げている大学が少なくない。その中で、ひときわ個性を輝かせているのが、尼崎市にキャンパスを構える聖トマス大学だ。創立以来40年にわたり、カトリックの精神を基盤に「ことば」と「ひと」の研究を通じて、国際人の育成に取り組んできた。 聖トマス大学が『CaLabo EX』を備えたCALL教室を新設したのは2005年の春。さっそく4月の新学期から、本格的な活用が始まった。英語だけでなく、フランス語、スペイン語の授業でもCALL教室はさかんに利用され、短期間のうちに語学教育になくてはならないものとして定着している。

多様なレベルの学生に対応した授業ができる

国際文化・言語学科「フランス語圏コース」の武田裕紀助教授は、CALL教室をもっとも積極的に活用しているひとりである。同コースの学生は4年間にわたってフランス語を学ぶが、授業は専門科目を除けば次の3つの形態に分類できる。

  1. ネイティブの教師によるフランス語だけで行われる授業
  2. フランス語文法の授業
  3. フランスの文化等に触れながら総合的にフランス語の能力を高める授業
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国際文化・言語学科 フランス語圏コース 国際言語教育センター副所長 武田裕紀 助教授

このうち武田助教授が担当しているのは、(2)と(3)の授業である。 「『CaLabo EX』のいちばんのメリットは、教材をデジタル化して持つことができるということです。学生はフラッシュメモリにデジタル教材を保存して家に持ち帰り、何度も復習することができます。実際、試験前には集中的に聞き取り練習をしているようです」
CALL教室のメリットとしてもうひとつ、他の先生方も口をそろえるのが、多様なレベルの学生に対応した授業ができるということである。

「授業中は、センターモニターで授業説明をし、ノート筆記が遅い学生のためにプロジェクターで記録を後送りしながら進めていきます。CALL教室では、可能な限り個々の学生のパソコン上での学習をモニターして、習熟度を確認しながら授業を進めていくことができます。例えば、配布した問題を早目に仕上げた学生には、e-Learning教材を追加するなどします。このようにレベルに応じた個別指導もできますから、結果的に質の高い、学生にとって満足度の高い授業を実現することができます」

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英語英文学科森田由利子助教授の授業風景

学生の評判はどうだろうか?武田助教授がアンケートをとったところ、「フランス語漬け」になれる点がよいと答えた学生が多かった。
「日本人の教師による授業でも、フランス語漬けの90分になるということですね。しかも、教師から与えられた教材だけではなく、そこから派生してインターネットから関連情報を得たり、あるいは、教師から与えられた情報であっても、リスニングのスピードを調節したり、聞き取れなかったところを繰り返し聞くなど、自分のペースで学習ができる。こうした点を学生は高く評価しています」

活発なコミュニケーションのある授業を実現

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英語英文学科 マーティン・ウェザビ専任講師る

英語英文学科のマーティン・ウェザビ専任講師は、「英作文」「コミュニケーション」の授業のほか、ゼミ(テーマは「語用論」)でもCALL教室を利用している。ウェザビ講師は、英語による学生とのマンツーマンのコミュニケーションをもっとも大切にする。 「CALL 教室を使う授業では、既に聖トマス大学で利用しているMoodleというウェブ上のバーチャル・キャンパスや「thisisapen.com」というウェブ上の英文法とTOEIC対策を十分含んだe-Learning教材サイトにアクセスして活用しています。このようなe- Learning教材を使うことによって学生は、授業中でも授業以外でも、つまりいつでも、どこからでも時間と空間の制約を乗り越えてしっかりした学習習慣をつけることができ、学生と教員がコミュニケーションを取る機会も拡大しています」

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英語英文学科ウェザビ専任講師の授業風景

さらに授業の質をより高めるために『CaLabo EX』の「ファイル配布・回収」の機能を活用している。「作文の授業では回答用のファイルを作っておいて学生に配布し、学生が書き込んだらすぐに回収します。これは、紙ベースよりはるかにラクでスピーディーですね」
加えて、ウェザビ講師は、映像利用のメリットも強調する。「テレビ文化の中で育ってきた現代の学生は、映像などの刺激がないと集中が途切れてしまう傾向があり、彼らの興味を喚起するため写真や動画をよく使います。また、学生の理解力を深めるために、宿題解説時にはプレゼンテーションソフトを使用します。これは、学生にとって理解しにくい文や単語の説明をするとき、そのまま訳して解説するのではなく、ヒントの映像を提示して解説することで、活発なコミュニケーションのある授業を実現できるからです」

自主的に繰り返し学習できるところに魅力

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国際文化・言語学科 スペイン語圏コース 聖トマス大学副学長 山口忠志教授

国際文化・言語学科「スペイン語圏コース」の山口忠志教授(聖トマス大学副学長・情報科学教育センター所長)は、スペイン語の授業のほとんどをCALL教室で行っている。
「外国語を学ぶ授業では、教師と学生が面と向かい人間どうしで話す、これがいちばん良いに決まっています。それを補う手段として、現時点でもっとも優れているのがCALLシステムという位置づけです」
こう語る山口教授は、e-Learningシステム『SMART-HTML』を使って質・量ともに豊かな教材を作成し、学生の自主的な学習意欲に応えている。
「テキストをデータ化し、音声を加えて、練習問題のような形の教材をたくさん作っています。CALL教室は自習用に開放していますから、授業でわからなくても、学生はあとで繰り返し聞き直し、見直すことができます。文法的な解説や各課のまとめを加えた教材を作ることもあります。CALL教室の良いところは、学生が早めに授業に来たり、自習時間を利用したりして、練習問題であろうと発音練習であろうと、自主的に繰り返し学習できるところですね」


インターネットやCALL教室が自由に使える恵まれた環境の中で、学生はやる気さえあればいくらでも勉強できるわけだが、山口教授は彼らの学習意欲には満足していない。 「われわれが学生の頃、今のような学習機器や教材があったら、どれくらい勉強できたろうと羨ましくなりますね。彼らがもっと活用してくれたらうれしいのですが」 ウェザビ講師も同意見のようだ。 「現在の学生にやる気を出させるのは簡単ではありません。動画やデジタルファイルを活かした教材を揃え、モチベーションを刺激して、やる気を起こした学生がどんどん使ってくれたらCALL教室もより生きると思います」
聖トマス大学では、教師側も授業中に提出された学生の音声データを個々に採点し、評価をフィードバックすることにより、学生のモチベーションを高める取り組みも行っている。

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