Case Studies

“映画スター”になりきろう!

2008/09/18

高大

“映画スター”になりきろう!
〜一人ひとりが主役、スキットのトレーニング〜

実行委員の運営による学園祭やウォークラリーの開催など、生徒たちの自主的な取り組みを尊重する茨城県立並木高等学校。一方で、茨城県の学力向上推進事業 「大学進学ジャンプアップ ハイスクール」の指定校として”魅力ある進学校”をめざすと共に、平成20 年度からは県内初の中 等教育学校※となる予定でもあり、地域の注目を集めている学校である。今回は、この並木高等 学校における、身近な素材を活用した2年生の授業、「英語II」の様子をレポートする。

映画に合わせて”アフレコ” にチャレンジ

まずは、映画のストーリーに集中

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映画について説明する松延先生

授業を担当する松延 亮一先生が、教室の照明を落とし、「チャーリーとチョコレート工場( 原題:Charlie And The ChocolateFactory)」のワンシーンをCALL教室に流した。まずは、正面に設置された大きなスクリーンに生徒たちを集中させたのだ。そし て、一区切りつくと、課題となるストーリーの背景について説明を始めた。

この日の目的は、主人公であるチャーリーとウィリーウォンカ氏とのやりとりを、映画の流れに合わせて発話練習することにある。主人公の感情や設定されている場面を意識しながら、生きた会話を再現できるようにトレーニングを進めていく。

自分の発話を録音して聴き比べる

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ムービーテレコを起動

スクリーンから一転、松延先生は、生徒用パソコンの画面に一斉操作でムービーテレコを起動すると、もう一度、対象となるシーンを流した。さらに、学 習モードを”Self-Learningモード” に切り替え、「スクリプトにはない音や声なども意識して練習してみなさい」と指示を出す。映画を活用したシャドーイングによるトレーニングが始まった。

生徒たちが個々に練習を始めると、松延先生は机間指導に力を入れる。一人ひとりに目を配りつつ、操作方法で戸惑っている生徒に声を掛けていくのだ。生徒たち にとって、CALL教室での学習は、今回が2回目。それでも生徒たちは、映像の中の特定の箇所を範囲選択し、繰り返し英単語を聴き取ったり、逆に、何度も 発話するなど、自分の苦手な箇所を集中的にトレーニングしていた。

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丁寧な机間指導

生徒たちが自分のペースをつかんだ頃合を見計らい、松延先生は、「自分の声をどんどん録音して、練習してみてください」と声を掛けた。生徒たちは、ムー ビーテレコの録音機能を活用しながら、アフレコさながらに自分の声を録音していく。さらに、再生機能を活用し、録音した自分の音声と映像の音声とを聴き比 べて、学習を深めていった。このムービーテレコを活用した個別レッスンについて、「自分の声を聴くという新鮮さが生徒たちに受け入れられている」と松延先 生は話す。一般の教室や普通のコンピュータ教室では実践できない指導が、CALL教室では実現可能なのだ。

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自分のペースで集中的にトレーニング

そして、個別練習がスタートしてから20分、「最終的には、ペアで練習をしてもらいます」という松延先生の一言で、生徒たちは、さらに集中した。

※一つの学校において一体的に中高一貫教育を行うもので、学校教育法を改正し設けられた新しい学校種である。 公立の中等教育学校においては、受験競争の低年齢化抑制の一環として、学力検査は行わないこととなっている。

ペアになってトレーニング、そして発表

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ボタンひとつでランダムにペアを組む

「柴崎先生と有年先生もCALLシステムにログインしてくれています。もちろん、この中の誰かとペアになります」と松延先生がマイク越しに声を掛けると、 歓声があがり先程まで緊張していた生徒たちの表情が一瞬で和らいだ。すると、松延先生は、「フリーペア」機能を選択。システム上で、ペアが組まれたことを 確認すると、生徒たちにも、自分の相手が誰なのか、声を出して確認するように促した。生徒の間から「あー、柴崎先生だ」「いいなぁ」などといった声が聞こ えてくる。さらに、生徒たちの様子を確認しながら、松延先生が、教室正面のスクリーンに先程の映画のワンシーンを再生すると、20組近い全ペアが、一斉に アフレコにチャレンジをした。そして発表へ。

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“生徒役” となって会話する柴崎先生(右)と有年先生

「フリーペア」機能の中にある「モデル」機能を選択し、初めは有年先生・生徒ペアが、そして、生徒同士のペアが、練習の成果を披露していく。さすが は有年先生、主人公の”舌打ち” や背景の音まで、そつなく演じてみせる。有年先生とペアを組んだ生徒も、一所懸命それに応えていた。次の生徒ペアも、戸惑いながら、恥ずかしげにスター ト。しかし、発表し終える頃には、声を出すことにも慣れ、クラスのみんなから拍手を受けた。

このようなきめ細かい指導の裏側には、生徒の習熟度に合わせてクラスを3分割するという、習熟度別クラス編成による指導の工夫がある。

平成16年度より、「大学進学ジャンプアップハイスクール」の指定を受けている同校では、2年生の英語科において、定期テストなどの成績を基にした学期ごとのクラス編成を行っていたという。

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ペアでアフレコにチャレンジ

今年度は、さらに一歩進み、「技能やその生徒に合った学び方など、編成方法を工夫したいですね」と松延先生は話す。その言葉の中に、授業における生徒一人ひとりを大切にする指導が垣間見えた。

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