Case Studies

学習状況の可視化により促す主体的な学び

2014/04/01

高大

CALLシステムの刷新を機に導入された『CaLabo EX』。学生一人ひとりの状況を可視化しながら、個々人に対応した学びを提供できる環境が、「英語教育」を主体的な学びへと変革しようとしている。

金城学院大学>
1889年、キリスト教宣教師のミセス・ランドルフが私邸内に開いた「私立金城女学校」をルーツとし、戦後間もない1949年、英文学部の単科大学として設立された。以後、教育内容の拡充を続け、現在では東海地区有数の女子総合大学として知られている。
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金城学院大学の英語教育

 金城学院大学の英語教育の特徴のひとつに、全学共通の「共通教育科目」である英語教育科目が挙げられる。多くの大学で選択式とされることの多い範囲にまで踏み込んだカリキュラムを「現代社会に必要なリテラシー」と位置づけ、社会における英語力への要請の高まりに応えようとするものだ。『CaLabo EX』が導入されたCALL教室は、こうした部分に関わる授業を担っている。

CALLシステムの本質を見つめて

 CALLシステムの更新を検討した際、第一に重視されたのは、その操作性だった。そこにハードルがあっては、授業の質の向上はままならない。誰もが戸惑いなく操作できることを大前提としつつ、そこで何が実現できるか。それが第二のポイントとなる。ここで『CaLabo EX』が有力候補に浮上した。他大学などでその利用経験を持つ先生たちからは、特に「ムービーテレコ」の明快な操作性と学習上の効果についてのコメントが多数あったという。

 さらに、『CaLabo EX』が持つインターネットとの親和性も評価された。外国元首の演説や、TED※などのイベントを通じた「旬の英語」を教材として取り入れられる環境への期待からだ。

 外部のインターネット環境とCALL教室を結ぶことには賛否があったが、『CaLabo EX』のWebサイト制限設定機能などを活用する一方、教材作成室を設置して、授業とは別の場で教員がネット上の素材を教材化するなどの工夫を行うことになった。

『CaLabo EX』がもたらしたもの

ムービーテレコ対応教材『America Live!』

 取材当日の授業ではムービーテレコ対応教材『America Live!』が大活躍した。テキスト*に添付されたDVDで予習(授業内容を予め視聴)している学生も多く、先生の発問にも反応が素早い。授業の終盤には、セルフラーニングモードやペアレッスン機能を使った会話練習が行われた。

「ムービーテレコを使ってセルフラーニングをする時は、指導者端末から、個々の学生の再生速度をチェックしています。最初はゆっくりでいいと指導していますが、それが徐々に1(オリジナルの速度)に近づくことで、その日の学習部分の習熟の度合いがつかめます。ある程度足並みが揃ったところで、ペアレッスンに移行して、実際のコミュニケーション体験を行わせるのは効果的ですね」と戸澤先生は話す。

 また、英語英米文化学科には英語スペシャリスト養成プログラムが用意されている。このプログラムでは、プロの通訳者養成のメソッドを取り入れ、通訳スキルを伸ばし、実践的な英語運用能力を開発するための授業を行う。市販の通訳練習用の教材のほか、CNNなどの海外ニュース、国際会議でのスピーチといった実際の映像や音声も同時通訳の練習用教材として活用する。

 『CaLabo EX』は同時通訳の練習をする際にも利用され、ムービーテレコを使って音声を流しながら、学生が同時通訳した内容を録音している。また、学生同士でペアを組み、一人が日本語または英語を読んだり話したりし、もう一人が同時通訳をする練習をする際には「ランダムペア」機能がよく使われる。録音した音声は、「ファイル回収」機能で教員が一括回収し、学生は自身のパフォーマンスに対する自己評価を「ファイル提出」する。

 「ランダムペア」の機能は自動的にペアが組まれるため、受講している学生からは「誰とペアになるのか、練習が面白い」といった声が聞かれる。同時通訳の授業については、「英語力はもちろん、日本語力も伸びて、知識が増える」と学生の評価が高い。

 こうした目に見える物差しで個々の学生の状況を把握できるのが『CaLabo EX』の大きなメリットだ。

主体的な学びのために

 授業で見た、個々の学生の状況を目に見える形で把握できる機能と相まって実現される学びの環境は、今、大学改革と絡んで注目されるアクティブラーニング的なそれと通底するものだ。

 これからの大学は、様々な学生の意欲に応じた柔軟なケアを求められようになるとされる。『CaLabo EX』などのICT技術は、そのために欠かせない道具の一つとなるに違いない。

製品導入の経緯

●既存のCALLシステムの老朽化により、リプレイスを検討。
●操作性の高さとムービーテレコの学習効果、インターネットとの接続による外部ソースの教材化などをポイントに選定。

導入後の変化

●学生の関心を集める教材選びと、ムービーテレコによる個々人のペースに合った学習環境の実現により、学習態度も能動的になってきた。
●ムービーテレコ対応教材のテキストに添付のDVDにより、予習的に教材に触れる学生も増えている。
●『CaLabo EX』により、教材再生速度など個々の学生の状況把握が容易になり、それに応じた個別対応も可能になった。

課題と今後の展望

●教材作成室の設置により、教員自らによる教材作成も進められつつあるが、さらにそれらの教材の共有化も進めたい。

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