Case Studies

横断的に多彩な学びを実践し、デジタル時代の〝ダビンチ〟を育成する

―福岡県―
久留米工業大学

「ものづくりセンター」や「インテリジェント・モビリティ研究所」をはじめ、工学系の学びに特化した施設・設備が充実する久留米工業大学。2015年に完成し、学内外から注目を集めているPC教室について、情報ネットワーク工学科長の河野央教授にお話を伺った。



久留米工業大学
〒830-0052 福岡県久留米市上津町2228-66
TEL 0942-22-2345

「人間味豊かな産業人の育成」を建学の精神とし、1966年、久留米工業学園短期大学を開設。2016年に創立50周年を迎えた。1976年には、久留米工業大学工学部を開設。現在は、大学工学部5学科、大学院3専攻があり、「実戦に強い工学技術者」を輩出。就職率は、毎年、全国平均および九州地区平均を上回っている。

http://www.kurume-it.ac.jp/

タッチパネル対応個別PCとHD対応センターモニターを導入

タッチパネル対応の個別パソコン。

 久留米工業大学の100号館(テクノみらい館)は、2016年の創立50周年を記念して新設された教育棟だ。その情報ネットワーク演習室には、西日本最大級との呼び声の高い80台のハイスペックマシンが並び、15年4月から運用がスタートしている。

 最大の特長は、学生用の個別パソコンに液晶タッチパネル対応型のワコム製PCを採用したほか、センターモニターには、高解像度の画像転送ニーズに応えるために『S300-HD』を組み込んだことだ。そして、最大80名の学生を収容可能としながら、40席ずつ2教室への分離も可能。さらには、授業支援システム『CaLabo LX』によって、直感的なオペレーションによる授業管理も可能となっている。現在は、情報ネットワーク工学科での使用が中心だが、今後は全学的な導入が検討されているほど、学生からも教員からも好評だという。

 今回お話を伺った情報ネットワーク工学科長の河野央教授は、芸術工学で博士号を取得している。専門はコンピュータグラフィックスを用いた視覚情報デザインだ。プログラミングやWebサイト制作、バーチャルリアリティにも長けており、「コンピュータ上で絵を描いて終わりではなく、そこにプログラムを組み合わせて何かをつくる教育」を推進したいのだという。

 この教室を主に使う情報ネットワーク学科には、履修モデルとして「ビジュアルコンテンツコース」「ソフトウェアコース」「ハードウェアコース」という三つのコースが設定されている。河野教授は、「スペシャリストとしてのスキルを身につけるとともに、分野の垣根にとらわれることなく、ゼネラリストとして社会に出ていってほしい」と話す。

 そこで名前が挙がったのが、レオナルド・ダ・ビンチだ。画家としてはもちろんのこと、建築や数学、解剖学、天文学、気象学、物理学、土木工学などの多種多様な分野で業績を残し、「万能人」との異名をもつ偉人である。「横断的に多彩な学びを経験して、デジタル時代のレオナルド・ダ・ビンチを目指してほしいのです」と、河野先生は学生の将来像について語る。

到達レベルの緻密さを見せるには、高精細HDモニターが必須

 情報ネットワーク演習室では、河野先生が「2次元コンピュータグラフィックス」や「3次元コンピュータグラフィックス」を、別の教員が「組み込みソフトウェア」や「CGプログラミング」「ネットワーク技術」などを指導している。また、上級生の有志が下級生に専門的なソフトの使い方を指導する「Picture塾」や「Unity塾」という時間も設けられており、空き時間は自習室としても開放されている。『CaLabo』シリーズでは語学教育での活用事例が多いが、久留米工業大学では、あくまでも工学系の学習効果を最大化するために活用されている。

 河野教授の授業では、基礎的な画像処理技術から、スカルプティングと呼ばれるモデリング技法の習得、タッチパネルで行うプログラミングやアプリ開発などが行われている。3Dオブジェクトの作成も多い。「学生には見よう見まねで課題に取り組ませますが、まずは見本をセンターモニターで見せる必要があります。その際、細かい作業であればあるほど、高解像度・高精細な画面でサンプルを見せることは、大きな意味があります。学生には作業の丁寧さを求めていますので、プロの作業の細かさを高解像度で見せることによって、〝学生だから〟という甘えからくる〝雑さ〟を一掃したいのです」と、河野教授はハードウェア画像転送システム『S300-HD』の活用意義を話した。

学生は、3Dアニメーションの制作やロゴ作成など、高解像度でのクオリティ確認を必要とする課題に取り組む。

授業支援システムは、理工学系でも存分に活用できる

 一方で、河野教授は『CaLabo LX』の利点も最大限活用している。学生の作品や参考になるWebサイト、動画コンテンツをセンターモニターに映し出すこともあれば、資料配布や課題の提出も『CaLabo LX』を介して効率的に行っている。学生が課題に取り組む際には、モニタリング機能を使って進捗を確認するほか、机間巡視しながら、実際に学生の手を取り、技術指導する場面も見られた。言うまでもなく、教員が教室内を歩くことで学生の緊張感は維持される。

 今後は、グループワークでプログラミングをする際に作業を補完し合うような使い方や、チャット機能を用いた理解度の確認にも力を入れたいと河野教授は言う。「マシンはハイスペックですし、授業内容も先進的な内容が多くなりますので、どうしても心理的なハードルを感じてしまう学生はいます。そこで、チャットを活用した個別対応をしてあげられたらいいですね」と、河野教授は展望を語る。理工学系分野において、いかに『S300-HD』や『CaLabo』シリーズを活用できるのか。久留米工業大学での次なる取り組みに期待したい。

河野教授は、『CaLabo LX』を用いて効率的に授業を進めつつ、対面での個別指導もする。
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