Case Studies

「学校放送」は優れたコンテンツ!

2008/07/24

小中

東京都目黒区立下目黒小学校3年1組担任 田端芳恵先生

【ICT活用レポート】

「助詞」の細かな違いを学ぶ

先生”だけ”行かなかった。
先生”も”行かなかった。
先生”しか”行かなかった。
先生”さえ”行かなかった。

学校放送.jpg

 画面に目が釘付けの子どもたち。映像教材には、子どもの集中力を高める効果もある。

 わずか数文字の助詞によって、文章の意味は時に微妙に、時に大きく異なってくる。大人は当たり前のように使っているが、子どもにとってはかなりの難関。それぞれの助詞が表す細かなニュアンスの違いを学ばせるのに、苦労している先生も多い。そこで田端先生は、NHKの学校放送を活用して、子どもたちの言葉に対する興味・関心を高め、進んで学ぶ中でより確かな理解が深まるようにしている。

 今回活用したのは、NHK『わかる国語 読み書きのツボ3・4年』の第6回「小さなはたらき者(助詞)」。15分の映像教材に、助詞の働きにかかわるシチュエーションが、いくつも盛り込まれている。

1)ボーリングでピンは何本倒れた?
ボーリングを題材に、「1本だけ倒れなかった」「1本しか倒れなかった」「1本も倒れなかった」では、それぞれピンは何本倒れたかを、アニメーションを含めた映像で例示。助詞によって「状況」の違いを表現できることを示す。

2)満腹? 空腹?
まんじゅうを題材に、「まんじゅうを3つも食べた」「3つだけ食べた」では、話し手の気持ちがどう違うかをわかりやすく示す。
「”3つも”だと、お腹いっぱい食べた感じがします」「”3つだけ”だと、もっと食べたいけど我慢している感じ」と子どもたちは細かな違いを発見。「まんじゅうを3つ食べた」という状況は同じでも、助詞によって「気持ち」の違いを表せることを学んでいた。

 学校放送番組を見終ると、番組内容に沿って田端先生が自作したワークシートを使い、ふりかえりと発展学習を行った。
驚かされたのが、子どもたちの理解の定着ぶりと、読解力の鋭さだ。

「松本さんさえ来てくれなかった」
「松本さんしか来てくれなかった」

 という例文から、「1人も来てくれなかった。松本さんは来てくれると思っていたのに、がっかり」「来たのは松本さん1人。他の人はなぜ来なかったんだろうと不安」などと、状況や感情の細かな違いを正確に、しかも深く読み取っていたのだ。大人が同じ例題を与えられても、果たしてどれほどの人がここまでの答えを導き出せるだろうか。

「教科書と黒板だけでは、ここまで理解させるのは難しいでしょうね」
と、田端先生は学校放送の魅力を語る。
「単に例文を読むだけでは、イメージがつかめずに混乱する子どもが出てきてしまいます。でも学校放送なら映像やアニメーションなどを駆使して、わかりやすく子どもに訴えかけられる。『1本しか倒れなかった』という例文とともに、ボーリングのアニメでピンが9本残った状況が示されるので、言葉の意味や違いを頭の中でイメージしながら学べるのです」
また、ボーリングやおまんじゅうなど、さまざまなシチュエーションで繰り返し学ぶことで、定着も進んでいるようだ。

 理解の深化と定着ぶりは、授業のしめくくりに行った「今日習った助詞を使って、文を作ってみましょう」という課題でも如実に現れていた。
ある子どもが、こんな例文を作ったのだ。

「アイスクリームさえ買えなかった」
「アイスクリームしか買えなかった」
「アイスクリームだけ買えなかった」

 助詞の違いを正確に理解して使いこなすだけでなく、単元のねらいまでも見抜いていなければ、こういう例文は作れないはずだ。
「小学3年生は、まだまだ語彙が少なく、表現力に乏しい面も見られます。今日習った助詞を使って、状況や感情を細かく表現できるようになってほしいと思っています」
この田端先生の願いは、確実に実を結ぶだろう。

学校放送が持つ「3つのメリット」

ワークシート.jpg

 授業で使ったワークシートは、学校放送の内容に沿って田端先生が自作したモノ。学校放送を軸にして教材を作るのも簡単だ。

 学校放送が活躍するのは、国語だけではない。田端先生は、道徳や理科、社会科などの授業でも学校放送を教材として使っている。使い始めてもう10年にもなるというが、その良さは何なのだろうか。

1)授業との親和性が高い
「学校放送は、学習指導要領に準拠して作られています。そのため、授業計画に組み込みやすい。今までの授業を活かしながらピンポイントで使うこともできるし、メインの教材にしてもいい。授業準備や教材開発が楽になります」

2)子どもの心を揺り動かす
「学校放送番組は、子どもの心に強いインパクトを与えることのできる優れた教材です。単元のねらいに迫る学びができるのはもちろんですが、教師の予想を超える発見や発想を通して生き生きと学ぶ姿に、『子どもってすごい!』と驚かされることがよくあります」

3)最新のデータが盛り込まれている
「資料集や教科書以上に新しい、最新の情報が盛り込まれているので、社会の動きに沿った学習を行うことができます」

 最後に、これから学校放送を使ってみようとする先生方に向けてメッセージをいただいた。
「一度見てもらえば、必ず良さがわかります。私も同僚の先生が学校放送を使った授業をしているのを見て、『これはいい!』とすぐ使い始めました。まずは気楽に、自分なりの活用の仕方で、一度チャレンジしてみてください」

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