Case Studies

英語教育特区荒川区の小学校で「フラッシュ型教材」が選ばれる理由

10年以上前から、全学年で英語教育を行っている東京都・荒川区。その荒川区の小学校の中でも、区立赤土小学校は『小学校のフラッシュ英単語/英語表現』が活躍していると聞き、その授業を取材した。

荒川区立赤土小学校

成田空港と都心を結ぶ京成スカイライナーが発着する日暮里駅がほど近いため、昔から外国人観光客が多く、それも、英語教育に力を入れ始めた理由の一つだという。
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フラッシュ型教材で、今日のめあての表現を練習

 5年2組担任の湊屋幸先生は、子供たちに〝OK! Let’s practice!〟英語でそう呼びかけながら、大型テレビに『小学校のフラッシュ英語表現』を映し出した。赤土小の「英語科」の授業では、毎回「今日のトピック」(めあての表現)を設定して、さまざまな方法で練習しているが、その練習方法の一つとして、フラッシュ型教材を用いている。

 取材当日の「今日のトピック」は、次の4センテンスだった。

〝What time do you get up?〟

〝I get up at _______.〟

〝What time do you go to bed?〟

〝I go to bed at _______.〟

 この表現を、『小学校のフラッシュ英語表現』を使って練習する。湊屋先生がメニューから「何時に起きる? 何時に寝る?」の項目を選び、スタートさせると、

A:What time do you get up?

B:I get up at 6:00.

 といった会話が、イメージイラストと音声つきで流れ始めた。子供たちはA役とB役のふた手に分かれ、それぞれの音声に続いて、英語を発していく。そして、A役とB役を入れ替えたり、ジェスチャーつきで答えたりと、変化を加えながら、繰り返し練習していった。最初は自信なさげに小さな声の子供もいたが、練習を重ねるたびに、声は大きくなり、表情もイキイキと輝き始めた。

英語には、三人の授業者が参加。担任の先生を手厚くサポート

 荒川区の小学校での英語教育の歴史は長い。全学年で英語教育を開始したのは、実に10年も前のこと。その後、数々の研究と実践を重ね、特色ある指導を行っているが、特筆すべきは、その指導体制の手厚さだ。例えば、赤土小では、英語の授業に、三人の授業者が入るのだ。

 まず一人目は、学級担任。二人目は、英語教育推進リーダー。英語の教科主任であり、教師としての指導力・授業力と英語力の両方を兼ね備えた教諭として、担任と協力して授業を計画し、進行する役割を担う。そして三人目が、英語教育アドバイザーだ。荒川区独自の制度で、任命された英語の堪能な方が、週2回程度小学校に赴き、授業に加わる。もちろんこの日の授業も、担任の湊屋先生に加え、英語教育推進リーダーの二階堂友紀子先生、英語教育アドバイザーの村上正子先生の「三人体制」で進められた。また、さらに外国人のネイティブアシスタント(NEA)が年間時数のうち半数程度授業に入っている。

 では、英語推進リーダーや英語教育アドバイザーは、どのようなサポートを行っているのか。担任の湊屋先生は、こう説明する。

 「授業は基本的にすべて英語で進行するのですが、実は私、英語が苦手なのです。2年前に他の区から本校に赴任してきた時は、『私に英語が教えられるのだろうか…』と、不安とプレッシャーでいっぱいでした」

 そんな不安を、英語教育推進リーダーや英語アドバイザーが解消してくれた。授業計画を立てる時は、英語教育推進リーダーが相談に乗って助言し、授業を行う際は、英語が堪能な英語教育推進リーダーや英語アドバイザーが、ネイティブに近い発音を子供たちに示す。「英語でどのように指示すればいいかわからないときは、こっそり二階堂先生や村上先生に教えてもらっています」と、湊屋先生は微笑む。こうしたサポートがあるからこそ、どの担任の先生方も、英語教育を進めることができているのだ。

授業者が3人もいるので、全員に目が行き届く。ワークシートにアルファベットを書く活動では、3人の先生方は散開して細かく指導。〝Very Good!〟などとほめていた。

イラストでイメージできるのがフラッシュ型教材の良さ

 では、赤土小が、フラッシュ型教材を選んだのは、なぜだろうか。

 「音声だけでなく、イラストも映し出されるのが、フラッシュ型教材の大きな魅力です。耳から聞いただけでは理解できない子供でも、イラストを見ればイメージしやすくなります」と、二階堂先生は述べる。

 たとえば、朝起きるイラストを見ながら〝get up〟の単語を聞くことで、理解しやすくなるのだ。

 子供たちの学習意欲を高める効果もあると、村上先生は言う。

 「子供たちは、フラッシュ型教材が大好き。他の教材よりも、明らかに興味、関心が高まっています」

 視聴覚教育主任の後藤真理子先生は、こう補足する。

 「学習意欲が高まるし、繰り返し練習をしても飽きません。本校では他に『小学校のフラッシュ基礎・基本』なども導入していますが、繰り返し練習して定着させる効果があると思います」

 だが、時には担任一人で授業を進めなけれならないこともあるという。

 「そのようなときでもフラッシュ型教材があれば、担任が英語に自信がなくても、ネイティブの音声を子供たちに聞かせられます。そして、フラッシュ型教材を使えば、授業を順調に進めることができる。とても心強いですね」と、二階堂先生は語った。

パワーポイントで自作した教材も活用。画面に表示された時刻を〝I get up at ______.〟の下線部に当てはめ、声に出して答える。

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