Case Studies

ICT環境整備を早くから実現、安心して利活用できることを目指す

2010/12/07

小中

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さまざまな取り組みを、積極的に推進

 小中合わせて54校を擁する東京都品川区で進められている教育改革「プラン21」は、小中一貫教育や学校選択制をはじめ、従来の道徳と総合的な学習の時間・特別活動を融合した独自の教育課程「市民科」などが盛り込まれている先進的なものだ。同区では、教育ICT環境の整備にも早くから計画的に着手、平成15年に児童・生徒の個人データ(学籍情報)を管理する学校事務をシステム化、平成17年からは教職員1人1台のパソコン配備を行っている。そして、平成22年夏、教育委員会と各学校のコンピュータ教室・ネットワークを統合したセンターサーバ化を実現した。そうしたさまざまな取り組みを積極的に推進している、品川区教育委員会事務局の小澤様にお話を伺った。
 「センターサーバ化の構想を具体的にはじめたのは、平成20年からです。私たちは早くからICT環境の整備を行ってきましたが、それに伴って、いろいろなことがありました」と小澤様は語る。学校によって導入されているソフトが違っている、コンピュータウイルスに感染してしまったなどのケースもあったという。さらに、一部の先生が私物のパソコンやUSBメモリを職員室に持ち込んで作業をしていたことなどもあり、環境面だけではなく、先生たちの意識にも格差があったようだ。「そうしたインフラや意識における格差をできるだけ排除して、環境の均一化を図る必要がありました。ただ、現場の先生方にはなるべく負担をかけたくはありません。そこでセンターサーバ化で一括運用・管理をしていくことにしました」
 そのためにはセキュリティの確保、Windowsや各アプリケーションソフトのアップデートの実行、各学校の端末やソフトの稼働状況がどうなっているかの確認、といったことが必要になってくる。また、課題となってくるのが、できるだけ現場の先生たちの負担にならないように、センターからの一括運用・管理をどのようにして効率よく、しかも安全に実施していくかだった。

機能と価格のバランスを重視

 予算が限られている中、いくら機能が豊富ではあっても高価なものは求めていなかった。本当に必要としている機能を備え、適正な価格のソフトを探していたところ、統合マネジメントシステム『InterMANAGER』の提案をチエルから受けた。十数社の資料をいろいろと比較検討していた小澤様が、最終的に選択したのは『InterMANAGER』であった。「機能と価格のバランスがよくとれていると思いました。こちらが求めていた機能はほぼ網羅していました。それにもうひとつ、学校には必須のシステムリカバリソフトとの連携ができている点も決め手のひとつでした」
 『InterMANAGER』は、システムリカバリソフト『WinKeeper』と連携して、事前に設定したスケジュールに従って、自動的にアップデートを行う仕組みを実現している。コンピュータを常に最新の状態に保つことはもちろん、生徒たちが設定をまちがって変えてしまっても再起動すると元に戻るリカバリソフトの存在は、先生が安心して快適にICTを利活用していくうえでは欠かせないポイントだ。「ただでさえ忙しい先生たちに、アップデートの作業をさせるという負担を強いるわけにはいきません。それに、不特定多数の生徒たちが使うコンピュータ教室ですから、設定や環境などが変わってしまうトラブルを未然に防ぎたい」と小澤様。
 また、『InterMANAGER』にはレポート機能があり、各端末の稼働時間やログオン時間、ソフトウェア使用時間といった明細の集計をとることができる。「いつ、どこで、誰が何を使ったかといった情報を把握しておくことも、大事なセキュリティ対策のひとつですから。また、各学校の現状を知ることで、ハードやソフトの学校間格差を効率的になくしていけるだろうと期待しています」

安心して利活用するためのセキュリティ対策にも注目

 セキュリティという点では、インターネットでの有害なサイトを閲覧禁止するため、またWebからのウイルス感染を防止するために、品川区ではフィルタリングソフト『InterSafe plus』も導入している。「コンピュータ教室の授業では、インターネットで動画を見せたりすることもあります。フィルタリングがかかっていれば、子どもたちがまちがって危険なサイトにアクセスしてしまうことが防げますから安心です」
 センターサーバ化に先立って、品川区教育委員会では先生たちへ『安全セミナー』という講習会も事前に開催している。ICTを利用する側の意識を変えていくことで、セキュリティ対策をより強固なものにしようと考えたのだ。「システムやソフトはあくまでもツールです。それを日々使っている先生たちの意識や考え方がとても重要になってきますので、そこをしっかりとサポートしていくのも我々の使命です」
 その言葉に、ともすれば環境面の整備のみにとどまってしまうところを、メンタル面までフォローしてICT利活用を促進していきたいという、教育委員会の真摯な熱意を感じた。

環境の均一化を図り、効率的で安全なICT利活用を目指す

最後に今後の展望について、小澤様にお伺いした。
 「今年度センターサーバ化できたのは、まだ約半分の学校です。三年後までに残りの半分を実施して、インフラについては完了になります。また、普通教室でもインターネットで調べ学習ができたり、どこでも気軽にICTを利活用できるようしたいので、無線LAN環境も計画しているところです。ほんとうに大切なのはそれらの整備が終わってからで、どうやって効率よく、しかも安全に運用を継続していくか。繰り返しになりますが、私たちが目指しているのは、インフラや意識における格差をできるだけ排除していき、学校環境の均一化を図り、子どもたちはもちろん、先生たちも安心してICTを利活用できるようにすることです。そこで、各メーカーさんには校内研修会などもぜひ積極的にバックアップしていただきたいですね」
 品川区のICT環境の展開は着実に広まっている。『すまいるスクール』では小学校施設を利用して、放課後や土曜日などに子どもたちが集まり、指導員のもとでスポーツやゲームに親しんだり、勉強会を行ったりしている。そこでもコンピュータ教室をインターネットや学習など、様々に活用している様子だ。
 「こうした子どもたちが"普通"にICTに慣れ親しめるようにしていきたいです。情報モラルの教育や、センターサーバからの教育用コンテンツの配信なども取り組んでいきたいと考えています。これからも現場と協同して、なるべく負担の少ない方法で、ICT環境の整備を充実させていきたいと思っています」

 品川区の今後の展開を、チエルも最大限に支援していきたい。

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設定によりWindows Updateなどを自動で行うことができます。

「ICT」というツールを使いこなせるよう、
現場の先生方と一緒に取り組んでいく

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和氣 正典 学務課長

 現場の先生方の協力を得て、「ICT環境整備検討委員会」を開催しています。ここでは、パソコンやプロジェクターといったICT機器の具体的な利活用について、いろいろと協議しています。「先生の指導力向上や、教材開発などに役立っているか」「子どもたちが操作を覚え、きちんと使えるようになっているか」「子どもたちの興味の幅を広げることや、学習意欲の向上につながっているか」といった観点から、今後の効果的な展開を検討しています。
 パソコンやプロジェクターなどを使った授業は、ビジュアルで強く訴求できるので、子どもたちは盛り上がります。大事なのは、それらICT機器の活用が、子どもたちの学力や学習意欲の向上に、本当につながっているのかどうかを確認することだと思っています。教員も、ツールであるICTの力と、自身の指導力とを混在して考えないようにすることが必要です。
 限られた予算でせっかく整備したICT環境ですから、最大限活用していきます。先生も子どもたちも、ICTに過度に依存するのではなく、ツールとしてあたりまえに使いこなしていけるように、これからも組織的支援を続けていきます。

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