Case Studies

半学半教をめざした慶應義塾普通部の取り組み

2008/12/25

小中

半学半教をめざした慶應義塾普通部の取り組み
〜『旺文社・英検CAT』の学習効果を学会で発表 〜

 LET関東支部 第121回(2008年度)研究大会が、10月17日、関東学院大学関内メディアセンターで開催された。大会テーマ「効果的な音声指導」のもと、基調講演や研究発表などが行われ、約100名の参加者で賑わった。
 今回取材に訪れたプログラムは、慶應義塾普通部・跡部 智(あとべ さとし)先生による実践報告「Web教材を利用した自律学習指導」。その中で、2005年度後期に導入したe-Learning教材『旺文社・英検CAT』の学習効果が報告された。

『旺文社・英検CAT』を使って自律学習の確立へ

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資料をサブモニターに表示してテンポよく報告が進む。

 慶應義塾普通部は、生徒数720名の男子中学校。
 2003年、自律学習環境の整備を目的に、SLC(Self-access Language Learning Center)を開設したが、当初は思うような効果が見られなかったという。教室に英語教材のオーディオCDなどを設置しても、参加者は少ないまま。「学習者のautonomy(自律性)を育てる」というスローガンを掲げたものの、実効性には繋がらなかった。
 2005年度後期、その状況が変わる。新たな取り組みとして『旺文社・英検CAT』が導入されたのだ。初年度は試験的に希望者70名への導入だったが、翌2006年度からは学校ライセンス契約を行い、全校生徒へと利用が拡大した。

 『旺文社・英検CAT』の全校導入スタート時には、授業時間内の利用についてのオリエンテーションを実施。それ以降も、活用率アップに向けて以下の指導に取り組んだ。

  • 自発的にアクセスしない傾向のある Slow Learnerに教員から声を掛ける。
  • 授業内容と連動させる。
  • 学習すべき文法項目を明示する。
  • 課題カードを作り、学期ごとの標準的な修得率を示す。
  • 成績には加算しないが、課題カード提出者に平常点を加算する。
  • 学習履歴からクラスメートの修得率を知らせて競わせる。

 慶應義塾普通部は、ほとんどの生徒が併設の高校・大学へ進学するため、受験は学習の動機にならない。そのため、自律学習の動機づけには工夫が必要だったのだ。

※半学半教
教える者と学ぶ者の分を定めず、相互に教え合い学び合う仕組み(引用:慶応義塾ホームページ)

『旺文社・英検CAT』での学習効果を外部のテストで証明

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第2教室のプログラムとして約30分間にわたって報告された。

 慶應義塾普通部では、毎年6月、3年生が英語コミュニケーション能力判定テスト(以下、CASEC)を受験している。2005年度から2008年度にかけてのCASECのスコアを比較することにより、『旺文社・英検CAT』の学習効果がはっきりと分かったのだという。
 今回の分析対象は、中学3年生。中学2年生の時に『旺文社・英検CAT』に取り組まなかった2005年度の中学3年生と、同教材に取り組んだ2006-2008年度の中学3年生のスコア計4年分を比較したのだ。
 CASECで測定される英語力は、「語彙力」「会話表現の知識」「大意把握(聴解)」「聞き取り(書き取り)能力」の4項目。導入前の2005年度と、導入後の2006〜2008年度を比較すると、「語彙」「会話表現」「書き取り」の3項目のスコアがアップしていることが分かった。ただ「聴解」だけは、優位な差が見られなかった。 これは、小学校の頃から音声には慣れ親しんでいることもあり、もともとのスコアが他の項目に比べて高かったことが理由のひとつとして考えられる。

 発表を聞いていた会場の参加者からは「生徒たちの英語力について、導入前の2005年度と導入後の2006年度以降とではレベルが違っていたということはありませんか」という質問があがった。この疑問について、跡部先生は次のように説明された。
 「私も担当者や授業の構成を確認しましたが、カリキュラムも変わっていませんし、大きく変わっている要因は他にはなかったのです。でも、2005年度と2006年度以降のスコアがこれだけはっきりと違う。唯一の差は『旺文社・英検CAT』の導入によるものでした」。

 この結果は、半学半教をめざし、学校をあげて自律学習の確立に取り組んだ慶應義塾普通部の努力があってこそ。『旺文社・英検CAT』はそれをサポートするツールとして大きな役割を果たしたと言える。

LET

 外国語教育メディア学会(通称LET:The Japan Association for Language Education and Technology)。前身のLLAから40年以上の歴史がある。本部と4つの支部で構成され、約1,500人の教職員・教育関係者が会員となっている。

『旺文社・英検CAT』

 英検5級から1級までの学習レベルを幅広くカバーしたe-Learning教材。
 購入者に配布されるIDとパスワードがあればインターネット上で学校でも家庭でも学習することができる。

CONTENTS

英検レベル診断 CATエンジン※により、英検各級を基準とした英語力レベルが測定される
英検模試 英検5級から準1級までの英検過去問題を5年分収録
語いクイズ 英検等のレベルを選択し、単語・熟語トレーニングができる
文法ドリル 文法項目ごとに学習を深めることができる
学習履歴 これまでのスコアや学習到達度を図表・グラフで表示できる

注釈※:
「CATエンジンとは?」
解答の正誤によって、次に出題される問題の難易度が変化し、英語力の絶対的なレベルを測定するコンピュータ適応型テスト。CATとは、Computerized Adaptive Testingの略。

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