Case Studies

eラーニングで教員の英語力を効率よく伸ばす

英語教育に大改革の波が押し寄せている。小学校での英語の教科化、中学校では、高校のように授業を英語で行うことなどが計画され、教員には英語力を高めることが要求されている。そんな中、高知県教育センターは、eラーニングによる教員の英語力向上に着手した。

高知県教育センター
高知県教育委員会の一機関として、教職員の育成を行う高知県教育センター。若年層の育成研修や、次世代のリーダー研修など、各種研修の開催をはじめ、先進的な実践研究や調査、資料や情報の収集と提供も行っている。

〒781-5103
高知県高知市大津乙181
TEL 088-866-3890

eラーニングなら時間と場所を選ばない

 高知県教育センターに厳しい現実がつきつけられたのは、平成25年のことだった。中学校・高校教員の英語力調査で、驚きの結果が出たのだ。

 「高校英語教師の英検準1級取得率は全国平均より上でしたが、中学校は全国平均をかなり下回っていたのです。これはなんとかしなくてはと担当指導主事から聞き、強い危機感を抱きました」と、高知県教育センター所長の下司眞由美先生は話す。

 教育センターでは、これまでも英語の指導力向上のためさまざまな研修も行ってきた。しかし、限界も感じていたと、下司先生は言う。

 「今の先生方は忙しく、なかなか研修の時間が取れません。特に高知県は東西に長く、県内各地から集まるのも一苦労なのです」

 そこで注目したのが、eラーニングによる自主学習だ。eラーニングなら、時間や場所の制約を受けず、各自が空いた時間に好きな場所で、効率よく学ぶことができる。英語のeラーニング教材は今や数多いが、教育センターが選んだのは『英検CAT』だった。

 「中学校・高校の英語科教員に求める英語力の基準として、文部科学省は『英検準1級以上』と指定していますよね。『英検CAT』なら、その名の通り、英検を目標に、5級から1級までレベルに応じた自主学習ができます。そこが魅力でした」と、樫尾文雄先生は指摘し、こう続ける。

 「クラウド型のeラーニング教材なので、PCさえあればどこでも学べる点、『履歴帳票』機能で学習結果や履歴を先生自身が把握しやすい点も、高く評価しました」

まずは、小学校教員を中心にスタート


「英検レベル診断」で英語力を確認。

 平成26年4月に『英検CAT』を導入すると、まずは小学校の外国語活動研修に参加した教員など約80名を中心に、活用をスタートした。夏休み中に2度の集合研修を行って、使い方をレクチャー。「英検レベル診断」で自分の英語力を診断した後、レベルに合った「語いクイズ」や「文法ドリル」で、eラーニングを進めてもらっている。

 「まず小学校の先生方から始めたのは、平成32年度からの英語の教科化が濃厚な一方で、小学校の先生方は英語を教科として教えた経験がなく、不安視する声が多かったからです」と、樫尾先生。

 同時に、コア・ティーチャー育成事業に参加している小学校・中学校教員や、若手の中学校・高校教員にも、『英検CAT』のIDを発行し、学んでもらっているという。将来、英語教育を推進するリーダーや、若い教員の語学力も高めておくねらいだ。

 「初年度ということもあり、敢えて目標は課しませんでしたが、小学校の先生で準2級、中学校・高校の先生で準1級レベルに達してくれることを目安にしました」と、上田妙先生は言う。

eラーニングと集合研修を融合

 『英検CAT』でのeラーニングを始めて、半年が経過。成果と同時に、課題も見えてきている。

 「多い先生で1か月に百何十回もログインして学習している一方で、まだまだ少ない先生もいます。今後は、先生方の学習意欲をどう高めていくかが、センターの課題です」と、竹本佳奈先生は話した。

 そこで教育センターが考えたのが、「eラーニングと集合研修の融合」だ。

 「eラーニングだけだと、どうしても飽きてきます。そこで、eラーニングの一環として集合研修も行い、みんなで同じ目標に向かって頑張っていく雰囲気を作りたいと思っています」と、樫尾先生も意気込む。

 平成27年度から「英語教育推進研修」が新たに始まるのを期に、この研修参加者(小学校・中学校・高校の教員約80名)にも、『英検CAT』で学んでもらうことを計画中だ。

 「PCを使ったeラーニングと、フェイス・トゥ・フェイスの集合研修。それぞれの良いところを取り入れて、両輪のように回して、相乗効果を上げていきたいですね」と、下司先生は言う。

郷土の偉人、ジョン万次郎のように

 とはいえ、語学力の向上がゴールとは考えていない。最終的には、「英語を学ぶことで、世界が広がる」ことを子どもたちに教えたいのだと、教育センターの先生方は口をそろえる。

 最後に、下司先生も、こう語った。

 「高知県には、『ジョン万スピリット』という言葉があります。高知に生まれながらいち早く世界に触れ、英語を使って活躍したジョン万次郎のように、夢に向かってあきらめずに挑戦し続ける精神を、子どもたちに育みたい。英語が苦手な生徒の中には、『高知に住んでいるのに、英語なんて必要ないでしょ』と言う子もいます。でもグローバル化が進む今、高知にいても英語を使う場面は必ずありますし、龍馬像が立つ桂浜の向こうには、太平洋が広がり、その海は世界につながっています。英語を学ぶことをきっかけに、子どもたちの未来を切り開いてあげたい。それが、私たちの願いです」

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