Case Studies

リスニングの授業に本はいらない 〜”教科書は音声”を実現する『CaLabo EX』〜

2008/09/18

高大

誰もが気軽に外国へ旅行する現代、英語に続く第二外国語も重要。その意味で、大学の第二外国語は学生にとっても学ぶ意味合いは大きいといえるでしょう。昔 と違って、教材が音声や映像などバラエティー豊か。先生方も、短期間に効果的に語学力を身につけさせようと工夫を凝らしています。今回は、京都大学大学院 人間・環境学研究科の大木充教授をお訪ねして、全学共通科目のフランス語の授業とCALLシステムの役割についてお話をうかがいました。

印刷されたテキストのない授業−教科書は音声!

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教科書は音声だから、机の上はスッキリ

2004年6月、大木充先生のフランス語・リスニングの授業(2回生)を取材させていただいた。場所は、吉田南キャンパスに新築された吉田南総合館北棟内のLL教室。この教室には、フルデジタル学習システム『CaLabo EX』が導入され、50席の学生ブースがある。

ふつう、大学の外国語の授業というと、学生の机の上には教科書と辞書、ノートなどが載っているものだが、この授業には主役であるはずの教科書がな い。大半の学生の机の上にあるのは、大木先生が配布した2枚のワークシートと筆記用具、それに辞書または電子辞書だけ。スッキリ、シンプルにワークシート と筆記用具のみという学生もいる。

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『ムービーテレコ』を使って、 繰り返し会話を聞き直す

大木先生のこの授業は「リスニング」だから、あらかじめ文字で書かれた言葉を学生に与えないほうが いい。つまり、この授業の教科書は、教室のスピーカーやヘッドセットから流れてくる”フランス語の音声” だけなのだ。一昔前に学生生活を送った人には、聞こえるそばから消えてしまう音声だけ、というのはあまりに心許ないかもしれないが……。

最初に授業の大まかな流れを紹介しておこう。授業開始時刻になると、大木先生はまず、採点した先週のワークシートの返却と同時に今日のワークシートを学生に 配布した。つづいて会話のスキットが教室のスピーカーから流れる。会話のタイトルは「パン屋さんで A la boulangerie」である。次はパン屋さんへのインタビューで、パン屋さんが何時から何時まで働くとか、忙しいのはいつかなど自分の仕事について話 すという内容である。

大木先生は全体をいくつかに分けて会話の音声を聞かせ、ポイントとなる語句や文法を解説し、簡単に発音指導も行う。解説が済むと、学生はヘッドセッ トをつけて会話を聞き直し、1問ずつワークシートの課題に向き合う。その途中にも、先生は必要に応じて解説を加えていく。その際、書画カメラを利用して ワークシートの一部を学生のモニターに転送する場面もあった。……このようにして、学生は先生の解説やヒントを聞きながら課題に取り組んでいった。

こ の授業には印刷されたテキストがないから、学生は自分の耳だけがたより。画面に表示された『ムービーテレコ』のボタンをクリックして、音声を何度も何度も 聞き直して確認し、フランス語の表現を音で脳に記憶していく。カセットレコーダーとちがって、『ムービーテレコ』はマウスのクリックだけで操作できるか ら、再生の繰り返しも苦にならない。いらいらしながら巻き戻しを待つこともない。

リスニングにコツはない! 繰り返し聞くのみ

この日の授業のおもな課題は?学生に配布されたワークシートをのぞかせてもらうと、次のようなものだった。
 

  • 会話の中から、会話文の一部をそっくりそのまま聞き取って、空欄に書き入れる。
  • 穴埋め問題。登場人物の会話を聞き取って、単語を空欄に書き入れる。
  • 三択問題。聞き取ったインタビュー全体を理解しているかどうかをみる。インタビューの内容が、フランス語の文でワークシートに記されている。その一部に当てはまる語句を3つの中から選んで文を完成させる。
  • 同時通訳。インタビューのレジュメを聞き取って、そのまま日本語に翻訳する。書かれたテキストなしに音を聞いて翻訳し文字で書き表す。

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教室での授業風景

耳で聞いた外国語を文字も見ずに翻訳するというのは、ひと昔前の第二外国語では考えられない授業スタイルですね、と大木先生に問いかけると、次のように答えてくださった。

「今 年、初めてやっているんですが、学生はけっこう真剣に取り組んでいますね。書いたものが渡されていたら、それを辞書を使って訳していけばいいだけです。で も、それがないので、逆にどこまで聞き取れるか、挑戦する意欲がかき立てられるようです。かつては、書かれたものが主、音声は従でした。もちろん書かれた 文字を読むことも必要なんですが、聞いて理解するということが、今後ますます必要になってくるでしょう。聞き取りにコツはありません。何度も何度も聞くし か、リスニングの力を伸ばす方法はないのです。1回聞いただけでは翻訳できませんから、学生は何度も何度も聞かなければならず、そのうちに自然にフランス 語の音にも慣れていくのです。『CaLabo EX』はこのような授業を実現してくれました。今日は音声だけですが、動画の教材を使うこともあります」

リスニングはもちろん、文法の授業にも『CaLabo EX』が威力を発揮する

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授業時数の少ない大学で1年間フランス語を学んだだけという条件を考えると、このリスニングの授業についていくのは決して易しくはない。それにもか かわらず、学生の書き込みを見るとなかなかよくできている。大木先生の優れた指導もさることながら、学生が真剣に学んでいるのが表情からもよくわかった。

授業のあと大木先生に、大学の語学授業にCALLシステムはどのようなメリットをもたらしているかお聞きした。

「語 学は、文法、講読、リスニング、会話といくつかの授業形態があります。会話は、少人数の対面指導が最適と私は思いますが、文法やリスニングには、 CALLシステムを使う授業がよいと思います。リスニングについては言うまでもありませんが、文法の授業でもCALLシステムは威力を発揮します。文法は 教えることが決まっています。文法は会話とは違って、質問に対して多様な答えが考えられるわけではなく、答えは1つしかありません。ですから、CALLシ ステムで十分対応できるのです。いろいろな誤答例などを含めてうまく教材を作れば、一人ひとりの間違いにも対応することができます。」

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「文法の授業を普通教室でおこなうと、誰か1人の学生を教師が指名して、黒板に書かせて、ここが間違っているよと指摘するスタイルになります。1つの質問 に対して、1つだけしか間違いが示されないわけです。他の生徒がこんなのはどうですかと質問してくれればいいけれど、あまり積極的な学生はいないのがふつ うです。多くの学生は、自分の答えがなぜ間違っているのかも理解しようとしないで、問題を素通りしてしまうわけです。CALLシステムでは個別に学習する ので、数多くの問題に当たり、間違ったところはきちんと直してくれます。また、文法は理解できるスピードが学生によって異なります。1つのことを習得する のに、早く習得できる生徒と、たくさん練習問題をしないと習得できない生徒がいます。ペースが違うので、普通教室で教師が何十人もの学生を相手にきめ細か な授業を行うには無理があります。その意味でもCALLシステムはたいへん有効です。フルデジタルの『CaLabo EX』は教師にとっても学生にとっても、操作が非常に簡単なので導入してよかったと実感しています」


 

数週間後、前期の試験が予定されているとお聞きした。もちろん、試験もこのLL教室で行われる。

「試験は聞き取りと、口頭練習していたフレーズを試験用紙に書くといった内容です。試験も、『CaLabo EX』を使って普段と同じ環境でおこなえるのがいいですね」

大木先生はさわやかな笑顔で、こう締めくくってくださった。

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