Case Studies

インタラクティブな環境だから育つ語学力

2008/09/18

高大

広めのゆったりとした教室。上智大学の新しいCALL 教室では、英語をはじめ、フランス語、イスパニア語(スペイン語)、ロシア語、ドイツ語、中国語など、多彩な語学の授業が行われている。”教卓にいながら にして、困っている学生に話しかけることができる””席の離れた学生どうしで会話練習ができる”リアルタイムにインタラクティブ。そんな多言語指導の現場 を紹介していく。

管理・運用コストを減らして教員・学生の利便性を図る

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総合メディアセンター

「語学の教育・学習環境について、どこかで”教材のデジタル化”に踏み切る必要があると考えていました」と語るのは、CALL教室を運営/ 管理する総合メディアセンター長田宮先生。

今回のCALL 教室の導入にあたっては、”CALLシステム運営委員会”において、過去の利用実績・利用環境に対する先生方からのご要望・運用方法などについて、ディスカッションが重ねられ、『CaLabo EX』をご採用いただいた。そして、導入から3ヶ月。

「学期の途中でCALL教室の利用申請を出す先生もいるなど、稼働率は90%近くに達しています」と話すのは、CALL教室のメンテナンス・サポートを担当している峰内さん。

こ の稼働率の裏には、教材準備室を設置し、先生方がデジタル教材を抵抗なく自由に作成できる環境を整備したほか、各種簡易マニュアルの作成・『CaLabo EX』の操作方法やデータファイルの保存方法といった先生方や学生に対する利用サポート等、峰内さんを始めとするスタッフによる、日々のメンテナンスに対 する工夫と配慮がある。「教材のデジタル化により、学生が、”いつでも・どこでも” 学習できる環境を実現していきたいですね」と田宮先生。

ITの良さを活かした学習環境の整備は、ますます拡充していくばかりだ。

CALL教室で、学生の将来を見据えた指導を

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外国語学部 学部長
吉田研作 先生

「CALL教室を活用することにより、単に言葉の練習だけではなく、その国の社会・文化・歴史などの地域情報をも学ぶ機会を与えることができる」と 語る吉田 研作先生に、上智大学における今回のCALL教室導入についてお伺いした。3回目のリプレイスとなり、2005 年秋には5 教室フル稼動となるCALL教室について、吉田先生は「学生、教員共に語学を学ぶ意識が変わってきた」と話す。今回の整備は、より”インタラクティブに” “視覚的に”” 実践的に” 指導できる環境に向けて、語学教材の活用自体を変えただけではなく、「自分の時間を使って自習をしたい」という学生の学習意欲にも応えることができたとい う。

そのCALL教室について「今後は、システムに頼るだけではなく、学生のどのような能力をどう伸ばしていくかを考え、自らがイ メージしている講義に近づけていけるように、システム理解に向けた教員トレーニングが必要」と吉田先生。例えば、留学などで海外に出る学生の事前準備の段 階において、擬似的な留学体験をさせることにより、語学だけでなく、心の準備もさせるといった指導時において、CALL システムは大いに活用できるという。「学生の将来を見通した長いスパンの中で、指導方法を考えていきたい」という吉田先生の言葉に、指導者・学習環境、共 に充実している上智大学における可能性の拡がりを感じた。

CALL教室・教材準備室のご紹介

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上智大学2 号館にあるCALL 教室は、総合メディア センターが管理/運用している施設の一部であり、全 教室共に『CaLabo EX』およびDVD・VHS・カセットテープ・MD・プロジェクタ・書画カメラなどのAV機器が整備されている。

同 教室では、教員・学生が、同センター共通のログイン名及びパスワードにより、授業や自習室として利用できる。さらに、授業で活用した音声教材などのファイ ルは、CD-R・CD-RW・USB メモリにより、データあるいはオーディオCD として持ち帰ることができるため、利便性は高い。このCALL教室の稼動率を支えているのが、同じフロアにある教材準備室。各種AV 機器を接続したコンピュータ(4セット)が用意されている。デジタル教材を自由に作成し、授業の中で活用することができるほか、専門スタッフが常駐してい るので、各種ソフトウェア・AV 機器の操作方法について相談にも応じてくれる。

耳を育てるフランス語の指導 -フランス語-

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外国語学部教授
G. メランベルジェ 先生

「赤ちゃんを見てもわかるとおり、言葉は、まず耳から音で入ってきます。そこで、このクラスでは、フランス語の基本的なリズムを聞き取り、そのリズムで発音することに力を入れています」と語るのは、メランベルジェ先生。この日のテーマは、「世界の国々」。

授 業は、まず、国名やその分類( 男性形/ 女性形等) など、文法の説明から始まる。一通り説明が終わると、学生は、『ムービーテレコ』を使った演習問題に取り組む。ここで使う音声教材は、メランベルジェ先生 がクラスの学生の達成度をみながら難易度を考え、教材準備室で前日に録音したものだ。話しかけられたとき即座に応答ができるようにとの考えから、単に聞こ えた音声をリピートするのではなく、「質問に答え、自分の意見をプラスする」形式で演習する内容になっている。「授業を受けることは、フランス語を学ぶと いう意味では、単なる準備段階に過ぎないのですよ。大切なのは、その後、自分でどの程度練習し、身に付けていくか」この厳しい言葉に支えられながら、学生 たちは、生のフランス語に、日々鍛えられている。

学生一人ひとりを能動的に活動させる -イスパニア語 (スペイン語)-

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外国語学部 助教授
B.アスティゲタ 先生

アスティゲタ先生の授業は、イスパニア語の歌を基につくられたデジタル教材を活用する個別学習から「フリーペア」機能を活用する会話練習へと展開されてい く。個別学習に取り組んでいる学生の様子を確認していたアスティゲタ先生が、ある学生PC の画面の動きをしばらくモニタしたところで、「インカム」機能に切り替えた。「今の言葉を、もう一度発音してみて。”o” の前にどんな母音がきていますか?」発音に独特のルールがあるイスパニア語は、母音の扱いが難しい。例えば、”tehe ofrecido” というように、単語の母音が”e・o” と連続すると、”he” は発音されないのだ。ヘッドセットを通して呼びかけられた学生は、何度か応答を繰り返し、自分の間違いに気がついた。授業の後半は、「フリーペア」機能を 使った一斉指導。ヘッドセットをつけた学生に対し、アスティゲタ先生は、課題文の背景などを説明していく。最後に、学生たちは、配布された課題(ワーク シート)に解答。「フリーペア」機能で組んだ相手と、イスパニア語の会話練習を兼ねた答え合わせを行った。

本番を意識した逐次通訳の指導 -ドイツ語-

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一般外国語教育センター講師
林 エルケ 先生

「通訳とはどういうものかを、まずは、学生に知ってもらいたい」という林エルケ先生の授業では、”通訳の仕事を引き受けたら” という一つのストーリーに沿って、普通教室とCALL教室での授業が隔週で行われている。通訳の仕事に就いているゲストを迎えた前回の授業から一転、この 日の課題は、実践を意識したトレーニング。”逐次通訳する独文の黙読と単語の確認” “同文のシャドーイング” と進むと、学生は、最後にソフトテレコを使って、自分が通訳している声を録音する。「以前は、学生が嫌がるので、自分の声を録音させることはしませんでし た。しかし、通訳という目的を考えた場合、自分の声が録音されるのは、当たり前です。そこで、マイクに慣れさせるのと同時に、単語を覚えることに対するモ チベーションを高めるために、この授業では録音をさせています」と林先生は話す。学生が録音した音声は、林先生が授業終了時に回収。次回の授業の中で、教 材として学生に聞かせ、自分たちの逐次通訳を客観的に評価させるとのことであった。

ヘッドセットを通じて”しっかり聞いて、声に出す” -中国語-

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一般外国語教育センター 講師
王 熙萍 先生

「CALL教室では、私の発音を正確に学生たちに伝えることができます。また、学生の発音も、私のところにクリアーな状態で届きます。日本人の学生は、話 すことに積極的ではない方が多いですし、声が小さいこともありますから、CALL教室は、発音を指導するのに有効です。」と話すのは、王先生。スクリーン に書画カメラの映像を表示させながら、文法と発音を指導するところから、この授業は始まる。そして、CaLabo EXの「モデル」機能を使って学生を指名し、日本語から中国語へ、習ったばかりの文法を使って訳出する活動へと移った。「では、『私たちは、みんな、王先 生が好きです』を訳してみましょう。ちょっと、あつかましいですね。 “好き”という動詞の使い方を考えて、発表してください」クラスに楽しげな笑い声が起こる中、王先生は、ヘッドセットを通して学生の訳出に文法事項を訂正 し、発音指導を加えていく。授業の最後は、「フリーペアレッスン」機能を用いた会話練習。「普通の教室では、遠くの席に座っている学生と会話練習をするこ とはできない。だから、このペアレッスンは、学生も楽しんでいます」と王先生は話してくれた。

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