Case Studies

SELHi指定校「21世紀の総合語学学習の実現」

2008/09/18

高大

SELHi指定校「21世紀の総合語学学習の実現」
〜『CaLabo EX』による従来の語学学習を超えた
“読む、聴く、書く、話す”の実践的活用〜

沖縄本島南東部、さとうきび畑が一面に広がる具志頭村港川地域は、古くから農業と漁業の盛んな地域。その港川地区に平成6年に開校した沖縄県立向陽高等学 校は、新設校ながら県内でも有数の進学校として知られています。今回は、『CaLabo EX』を使った英語の授業を拝見しました。

従来の語学学習から一歩踏み込んだ授業の実現

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小河原 賢二 先生

「調和のとれた国際感覚を身につけ、国際社会で積極的に行動する意欲を持った人材の育成」。これは沖縄県立向陽高等学校が掲げる教育目標の一つである。

そ の目標に沿う形で「理数科」と「普通科」のほかに県内でも特色のある「国際文科」が設置されている。そこでは、「国内及び国際社会で活躍できる人材の育成 を目指すため、英語コース及び中国語コースを設置し、LL演習・中国語演習等特色ある科目を学習して、外国語による実践的コミュニケーション能力の育成を 図る」べく様々なカリキュラムが組まれている。

先頃その成果が認められ文部科学省が推進する、英語教育を重点的に行うスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi) に指定され、従来の高等学校教育のレベルを超えたユニークな語学学習が行われている。

向 陽高等学校はSELHiの研究開発課題として「英語での模擬国連会議に参加・運営できる人材を育成するための教育課程及び指導内容の研究開発」に取り組ん でいる。この”模擬国連” を実際に英語の授業に取り入れいる小河原賢二先生にお話を伺った。「”模擬国連” とは、まず、生徒一人一人を一国の国連大使に任命します。そしてそれらの大使の中から議長を選出し、国際問題を討議するという形態の授業です。もちろん全 て英語で討論し、その議事録をディレクター役の私かALTが英語でパソコンに打ち込み、議事を進行していきます」

「コンピューターを 使うと、生徒の発言をリアルタイムでプロジェクターや個々の画面に映し出すことができ、更に投票結果や議事録をハードディスクへ保存し、何度でも見ること ができます。また、ヘッドセットを使用しての授業のため、これまであまり発言しなかった生徒も積極的に話すようになりました。実は、従来のLL 教室にはまったく興味がありませんでしたし、コンピューターの導入も当初は、国連に関する事項をインターネットでリサーチすることくらいしか考えてなかっ たのですが、ここまでできることに驚いています。また、『SELHi』の指定ということで、琉球大学から英語の先生を招き『CaLabo EX』を使った授業が行われるのですが、その授業を見学し、『こんな使い方があるのか!』と、触発もされました」と、従来のLL教室や一般の教室ではでき ない授業がここで展開されていることが語られた。

「集中しやすさ」に工夫がなされたCALL教室

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コの字型の教室レイアウト

『CaLabo EX』の教室に入って驚いたのは、机が全て壁に向かって配置されているということである。これは、小河原先生の提案によるものとのことで、「従来の対面式 (講義型のレイアウト)だと、どうしても生徒は画面ではなく教師の方を向く傾向があり、個別の作業のときに集中しにくいという欠点がありました。この 『コ』の字型に変えてから、生徒たちがモニター画面に集中するようになり、”読む、聴く” だけでなく、恥ずかしがらずに個々人がヘッドセットで”話す”ようにもなりました。また、教師からも生徒個々のモニターが一巡できるので指導がしやすくな りました」とCALLシステム導入ならではの教室レイアウトについて説明して下さった。

おうかがいした3年生のクラスでは、この CALLシステムを使用するのは初めてとのことだった。緊張気味の生徒たちのために、小河原先生は「サイモンゲーム」で授業を始めた。サイモンゲームとは 「Simon says 〜」と言ったときだけ指示どおりに動き、それ以外は動かないようにするゲーム。もちろん、指示を含め、授業の内容はすべて英語である。ゲームには、さりげ なくヘッドセットやボリュームつまみの位置を確認させる配慮がおりまぜられた。先生の巧みな英語に、生徒たちは徐々に英語の世界へと引き込まれていった。

授業に活用される様々な『CaLabo EX』の機能

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サイモンゲームによるウォーミングアップの後、「英語?」の授業は、あらかじめ教材サーバーへアップした新出語句の音声、質問の音声を「ソフトテレ コ」というリスニング・スピーキング学習用のアプリケーションを使ってディクテーション(聞いたことを書き取る)させることから始まった。今回初めてソフ トテレコを操作する生徒に対して小河原先生は、聞きたい箇所を繰り返し聞くとき(部分再生)の方法を教え、聞き取れた単語を書き出すための問題用紙(MS Wordで作成)を『CaLabo EX』の「ファイル配布」機能を使って生徒たちのパソコンに配布した。

生徒はこの問題用紙に単語を書き出すのだが、3年生のクラスなのでキーボードからの入力はスムーズである。Wordのスペルチェック機能で単語の誤りに気づく生徒もいた。実はこれも先生が意図していたことなのだ。

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質問に答えるALT

単語書き取りの時間を見計らい、次に『CaLabo EX』の「フリーペアレッスン」を使い、ペアになった者どうしで会話しながら聞き取った単語の情報交換をさせた。小河原先生によると、「隣どうしでペアを 組むと、どうしても互いの画面を見て、教え合うようになってしまいます。この『フリーペアレッスン』はランダムに離れた席の生徒をペアにするため、画面を 見せて教え合うような事はできず、耳で確認するようになります」と、従来できなかったことが『CaLabo EX』導入によって出来るようになったと話された。

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ヘッドセットを使い、リスニングに集中する生徒たち

引き続き、教科書本文の内容に触れる質問音声のディクテーションに移ったが、生徒の中には先生が説明していないにもかかわらず、「ソフトテレコ」の スピード調節機能を使って聞き取りにくい語句を聞きなおしたり、「フリーペアレッスン」時に自動で起動される「文字チャット」機能を使って互いに正しいス ペルの情報交換をするなど、はやくも生徒たちがこの『CaLabo EX』を活用し学習している場面も見受けられた。

最後に、『CaLabo EX』の「モデル」機能を使って、指名した生徒の画面を全員に映して解答を発表させながら答え合わせをし、この日の授業は終了した。

60分間の授業時間中、生徒たちは意識せず、常に自分が主体となった言語活動を行っており、「Input/Output」の流れで4技能を使っていたのが印象深かった。

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また小河原先生は今回使用しなかった「URL一斉表示」機能によって指定したホームページを開き、生徒たちが自主的に英語の素材に触れるようにしたいとも語っており、そのポテンシャルの高さが覗えた。

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