Case Studies

年間指導計画の中に組み込み”普段の授業”の一部としてCALLシステムを活用

2008/09/18

高大

年間指導計画の中に組み込み、
“普段の授業”の一部としてCALLシステムを活用
〜高校1年・オーラルコミュニケーションIの指導から〜

3ヶ月に渡る準備期間を経て、2005年4月より本格稼動した東京都立新宿高等学校のCALL教室は、1年生・オーラルコミュニケーションの授業の中で、 積極的に活用されています。ここでは、主にe-Learning教材『Viva! SanFrancisco』を活用した授業の様子をご紹介します。

CALL教室を利用した授業を隔週で行う

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各自のペースで、集中して取り組む

始業のチャイムと共に、生徒たちがCALL教室に入ってきた。教科担任である熊谷先生が「教室に来た人からログインをして」と声をかけると、各自に 割り当てられたID・パスワードを入力し、 次々とログインしていく。さらに、Windowsを起動し終えた生徒は、先生に指示されるまでもなく『Viva! San Francisco』にアクセス、学習を開始できる状態へと準備をスピーディに整えた。

CALL教室における授業について、「この教室を使い始めた頃は、本当に大変でした」と熊谷先生は振り返る。”パスワードを忘れた””e-Learning教材へのアクセス方法がわからない”など、40数名の生徒に対して、右往左往したこともあったという。

しかし、そんなことも数回目まで。生徒たちは、この学習環境に慣れてしまうと、一言声をかけるだけで、授業に必要な準備ができるようになった。

そんな生徒たちの様子を見ていた熊谷先生から、「今日は『Viva! San Francisco』 のChapter 13だよね。今から25分間、8:55までは、自分のペースで学習してください」と、次の指示が出された。すると、「この前の授業は、ドアを開けた瞬間の 場面で終わったから。続きが気になるよね」などと教材の話をしながらマウスを動かしていた生徒たちも、ディスプレイに表示された問題へと、次第に集中しは じめる。
 

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『Viva! San Francisco』は英語に対する生徒の関心を高めると共に、リスニング強化を目的として学年全体で利用しています」と熊谷先生。CALL教室を活用す るオーラルコミュニケーションの授業の中で、毎回1章ずつ、20〜30分間かけて取り組んでいく。

同教材に取り組む生徒たちは、”英語のスクリプトや日本語訳を確認しながらビデオを見る””ノートに必要事項を書き留める”など、ネイティブの発音に触れ、各自で学習方法を工夫しながら、自分の耳を鍛えていた。

 

ペアレッスン機能を用いて、生徒同士が英語でディベート

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ビデオを見ながらスキットの確認

CALL教室に慣れてくると、さすがに生徒の集中力が続かなくなりがちになる。そこで、生徒たちが集中して課題に取り組むように、熊谷先生は、この授業の中で2つの工夫を取り入れている。

1 つめは、CALLシステムとして設置されている”中間モニター”の 活用。CaLabo EXのモニタ機能を活用し、各生徒用パソコンの画面を巡視させると同時に”中間モニター”に配信する。さらに、やはりCaLabo EXに搭載されているアプリケーション監視機能も併用し、生徒用パソコンで起動されているアプリケーションを監視している様子を”中間モニター”を通して 配信する。そうすることで、生徒たちの間に緊張感が生まれ、ブラウザソフトを使って遊ぶなどということがなくなるのだという。

2つめ は、『Viva! San Francisco』で学習した内容を定期テストの中で出題し、評価すること。学習結果が成績に反映されるということも あって、生徒たちの課題に取り組む姿勢が、変わる。また、テスト前には、放課後にCALL教室の開放を希望する生徒のために、開放スケジュールを廊下に貼 り出すなどして対応するのだという。

約束どおり25分間が経過したところで、熊谷先生がヘッドセットを手にした。CaLabo EX の先生音声機能を使い、生徒に声をかける。「一旦、今やっている教材を止めてください。では、これか ら音声を一斉に流します。プリントを見ながら、流れる音に合わせて、自分で声を出し て発音してみましょ う。まずは、先生がやってみせます」。 熊谷先生が、ムービーテレコを起動し、音声ファイルを選択する。 そして先生用パソコンで再生させながら、シャドーイングを演じ る。流されたスキットは、『Viva! San Francisco』で学習したものだ。

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ムービーテレコを使い音声を配信する

同じくムービーテレコを使って、シャドーイングをした生徒たちは、少し照れくさそうに声を出していた。

このようにCALL教室を活用している熊谷先生に、今後の利用計画について、お伺いした。 「この学年の『Viva! San Francisco』を活用した指導は、1年生〜 2年生の夏をメドに終了する予定です。その後は、資格試験への

同じくムービーテレコを使って、シャドーイングをした生徒たちは、少し照れくさそうに声を出していた。

このようにCALL教室 を活用している熊谷先生に、今後の利用計画について、お伺いした。 「この学年の『Viva! San Francisco』を活用した指導は、1年生〜 2年生の夏をメドに終了する予定です。その後は、資格試験へのチャレンジという意味から、英検完全攻略(2級)、TOEIC(R) テスト完全攻略の活用を考えています。3年生になったら、センター試験英語完全攻略ですね」と話す。

単年度計画から学年をまたぐ指導計画へ。CALLシステムの利用が、カリキュラムの中で計画的に組み込まれ、普通教室における学習と同様、英語力を伸ばす方法 の一つとして定着していると感じた。

生徒の利用責任を促すCALL教室の運営

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英語科 熊谷聡一郎先生

教室に入ってきた生徒たちを見て、まず驚いたのは、入り口の上履きが、きれいにシューズボックスに収められていたこと。

「CALL教室をきちんと利用させることは、生活指導の一部です。上履きを揃える・飲食をしない・机に落書きをしないなど、1年生のうちからルールを徹底させ、利 用責任の意識を植え付けます」という熊谷先生の言葉どおり、教室は綺麗に利用されている。

その上で、今回のCALL教室の導入にあたっては、操作方法の会得、利用ルール作り、カリキュラム編成に至るまで、3ヶ月間を費やした。まず問題になったの が、教員の操作スキル。英語科全体による2回の研修会に加え、熊谷先生をはじめとする授業の担当教員に至っては、その他にも数え切れないほどの打ち合わせ を行ったという。そして、コンピュータの苦手な教員も利用できるように、先生用パソコンが設置されている教卓には、簡単なマニュアルを貼った。

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チャットなら素直な気持ちが表現できる?

一方で、生徒に徹底させる利用ルールについては、細かいことを強要するのではなく “当たり前のことを守らせる” “起きた問題には、個人指導を徹底する”ことを基本として、配布用のマニュアルは作成しなかった。

こ のようにして運用がスタートしたCALL教室。熊谷先生は、今回の授業の最後に、チャット機能を用いて生徒の感想を集めた。「e-Learning教材を 利用しての感想は?」という質問に対し、「難しい」「楽しい」等の感想に混じって「(英語力が)少し伸びた・・・気がする」との書き込みが。控えめだが、 自信の芽生えを垣間見た気がした。

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