Case Studies

『CaLabo EX』によって中国語の授業の質が向上

2013/03/28

高大

「地域を支える人」を育てる久留米大学は5 学部11学科と5つの大学院研究科からなる総合大学だ。御井キャンパス内には『CaLabo EX』を備えたCALL教室が3室ある。e-Learing 教材を活用して中国語の授業を行っている李偉准教授を訪ねた。

久留米大学
1928 年に創立された九州医学専門学校を前身として拡大発展した私立大学。文・法・経済・商・医の5 学部と5つの大学院研究科を擁する。地域社会に貢献できる有為な人材育成を基本理念とする。
【御井キャンパス】
〒839- 8502 福岡県久留米市御井町1635
TEL 0942- 43- 4411
URL http://www.kurume-u.ac.jp/

使いやすさで選ばれた『CaLabo EX』を3教室で活用

 久留米大学における外国語教育は、1993年に設置された外国語教育研究所が統括している。英・独・仏・中・韓・日の各言語教育部門が置かれ、13人の専任教員と約100人の非常勤講師が授業を受け持つ。言語教育を通じて、多言語、多文化が共存する国際社会ならびに地域社会の平和的・共生的発展に貢献する人材育成をめざす。
語学教育が行われる御井キャンパス内のメディアセンターには、LL教室が6教室、ほかにLL自習室1室、AV演習室4室がある。そのうちのLL教室1室と、隣接する情報教育センター内のCALL教室2室に、『CaLabo EX』の最新版を導入している。久留米大学では長年にわたり、『CaLabo EX』を使い続けてきた。
「2000年の前半に、パソコンやIT機器類を活用して授業を展開するようになり、今後の授業運営を円滑にするために、授業支援システムやCALLシステムの必要性が話し合われました。その後、いくつかの社の製品を実際に操作したうえで、その操作性の良さから、チエルの製品が選ばれました」。李准教授は05年に外国語教育研究所の講師として着任。ちょうどその年、第1LL教室にCALLシステムが導入された。
「語学の教員は情報機器の専門家ではありませんから、できるだけ簡単な操作でやりたいことができるのが理想です。それをかなえてくれたのが『CaLabo EX』だったのです」と李准教授は当時を振り返る。研究所では語学教育に関わる教員を対象に、年1回研修会を開催している。研修会では、日頃の使用感や使用したなかでの課題点を挙げて、改善に努めてきた。

CALLとe-Learningの組み合わせは語学学習に理想的なスタイル

 李准教授の授業は、週2コマの授業のうち、1コマはCALL教室で行い、もう1コマは普通教室もしくはコンピュータ室を使う。CALL教室では、単語学習に始まり、会話練習やリスニング、ライティングの練習のほか、中国文化を映像で学ぶ。コンピュータ室での授業は自作のe-Learning 教材を活用して学び、小テストも実施する。
「語学の授業は教養科目ですので、どのように中国語への興味を引き出すかというところに重点を置いて指導しています。学生たちが専門科目の学びに時間を費やすことができるよう、中国語では授業をメインで学び、あとはe-Learningで各自が進められるようにと考えています。しかし、せっかく中国語を学ぶ機会を得たのですから、1年間の入門編で基礎を身につけ、中国語とは何かを知り、単語を覚え、音声を理解して発音でき、中国語で簡単な挨拶程度はできるようにしてほしいものです」と李准教授は話す。
毎時の内容をまとめたパワーポイントの資料、小テスト、授業で流す映像など、資料はすべてオンラインで公開し、学生たちが閲覧できる。意欲的に学ぼうとすれば、1年間である程度までスキルが向上するよう、体系立てたカリキュラムが用意されている。
「語学学習においては、CALLシステムとe-Learningシステムを組み合わせた学びは、理想的なスタイルだと思います」と李准教授。「ただし、システムさえ整っていればよいのではありません。大切なのは、学生自身がいかに自分で学ぼうとするかです」と述べた。

4技能を統合した学びをCALLシステムが支える

e-Learning システムを導入した CALL 教室活動とシステム機能の分担(1コマ 90 分)

 『CaLabo EX』をそなえた第1LL教室での授業は、どのように組み立てられているのだろうか(=下表参照)。
教室へ入室した学生たちは、各自の所定のパソコン席に着席してログインして授業の開始を待つ。出欠状況はe-Learningシステムで毎回統計を取り管理している。始業から15分間は復習の時間だ。前回の授業で学んだ重要語句や文法事項などのポイントを、パワーポイントの資料を見ながら各自が確認する。
続いて、リスニングやシャドーイング、会話、もしくはライティングと翻訳の練習の時間へと移る。教材がe-Learningシステムによって配布され、『CaLabo EX』の「録音放送機能」で選択して、事前に李准教授が録音しておいた音声を流し、まず学生たちはヘッドセットを装着してリスニングの練習をする。シャドーイングやペアでの会話練習をする際には、「モニタ機能」で、学生の状況を監視する。そして、発音に注意を払い、「個別指導機能」を使って丁寧に指導する。ペアはランダムで組み、一定時間で次々とペアを変えて、なるべく多くの人と会話練習ができるようにしているという。会話練習とライティングは交互に行い、ライティングの場合は、e-Learningシステムを通じて配布された練習問題に各自が取り組む。
こうした授業前半の学習成果を確認するための小テストも毎回実施される。小テストはe-Learningシステムで自動採点・集計される。その後、解答が提示され、解説を行う。
続いて、中国文化を紹介する映像を10分間鑑賞する。観賞後は、日本文化との比較などを交えた解説が入り、授業は後半へと進む。
後半ではその日の学習内容をまとめたパワーポイントの資料が配布され、新出語句や文法事項が説明される。一つずつ音読をして発音を確認したうえで、10分間の会話の音読練習に入る。音に慣れ親しみ、内容を理解することまで授業内で行い、最後の5分間で、その日の授業の要点をまとめ、宿題を提出する。授業は流れるように進んでいった。学生たちも操作に戸惑うこともなく、教材を受け取っては確認し、音声を聞き、発話している。李准教授によれば、初回の授業をオリエンテーションとして、CALL教室の使い方やパソコン操作、授業の受け方などを説明すれば学生も理解でき、1か月もすればスムーズに授業を進められるようになるという。学生へのアンケート結果から見ても、「中国語の勉強に役立った」「使いやすい」などの声が多く、学生にも好意的に受け入れられていることが示された。

単語習得や会話練習に時間を多く割くためにも

 李准教授は「『CaLabo EX』で私がよく使うのは、会話のペアレッスンやグループレッスンです。普通教室で授業をする場合は、隣同士や教室内を実際に動き回って会話の練習をしなければなりませんが、CALLシステムを使えば、席に居ながらにして、離れた席の学生同士で会話練習ができ、授業効率がかなり上がります」と効果を示す。また、「DVDやビデオ、YouTubeなどの映像を学生の画面へ転送したり、膨大な授業の資料を配布したり、といったことが瞬時にできることも授業効率を高めています。CALLシステムとe-Learningシステムなしには、もう授業は成り立ちません」と強調した。
外国語教育においては、いかに単語を覚え、会話練習の時間を確保できるかが習得へのカギとなる。そのためにも、音声データを含んだ単語の練習問題などのe-Learning教材を開発していきたいと李准教授は考える。そして、CALLシステムを活用して効率よく授業を進めて会話活動に時間を割けるようにし、学生のコミュニケーション能力を高めたいという。
CALLシステムとe-Learningシステムを併用することで高まる教育の

製品導入の経緯

● 大学にパソコンやICT 機器が導入され、語学教育の授業改善と授業効率の向上の必要性が高まったため。
● 語学教育における質の向上のために複数社の

導入後の変化・成果

● ペアレッスンやグループレッスンなどの会話練習が離席することなく次々と相手を変えてできるようになり、モニタ機能を使うことで個別指導がしやすくなった。
●パソコン操作が苦手な教員であっても、簡単な操作性で活用しやすい。
●自作のe-Learning 教材と組み合わせて使えるので便利。

課題と今後の展望

● 現在使っていない機能の使い方も理解して、さらに活用していきたい。
● e-Learningシステムとの併用により、さらなる語学教育の質向上をめざす。

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