Case Studies

学びを共有する臨場感が授業を活性化する

2013/09/30

高大

日本大学理工学部の船橋キャンパスには、『CaLabo EX』を備えたCALL 教室が2 室ある。システムを活用して活気ある授業を展開しているのが、中村文紀助教だ。航空宇宙工学科1年生のリーディングの授業を訪ねた。

日本大学理工学部
工学と理学の両分野を広く網羅した14 学科からなり、1万名近い学生が学んでいる。1920 年の設立以来、変化する社会のニーズに応えて、現在までに20万人を超える卒業生を輩出している。
【船橋キャンパス】
〒274- 8501 千葉県船橋市習志野台7-24-1
TEL 047- 469- 5330
URL http://www.cst.nihon-u.ac.jp

ペンタブレットを活用して学生の解答を添削する

 「授業はステージ」と言う中村先生の授業は、テンポの良い掛け合いの連続で、学生を飽きさせない。ときに軽妙に、ときに真剣に、学生の解答にコメントし、彼らの声に応えていく。「ステージに立っているときは、学生の発言をどんどん拾うようにしています」と中村先生は話す。

 授業は4人1組のグループワークを中心に進む。この日の授業で扱ったのは、アメリカの星条旗の由来をテーマにした4つの英文だ。グループごとに英文を訳すこと、星条旗について調べることが、前回の宿題として課されており、中村先生はクラス全員を前に各グループの和訳を添削していく。星条旗についての各グループの資料や、その場でインターネット検索した情報を交えながらの解説に、学生たちはどんどんと引き込まれていく。

 あるグループの訳が各自のパソコン画面に提示されると、中村先生は手元のペンタブレットとペンツールを利用し、まるで解答用紙に書き込むように修正指示を入れていく。「学生の和訳を直接添削している感覚」と中村先生は表現し、「私の書き入れた修正はデータ保存できないので、学生はその場でメモを取ります。学生の頭や手を動かすことで、授業が受け身になるのを防げるのです」と話す。英語の文法や文構造から、和訳する際の日本語の選び方まで、丁寧に解説していく。一方で、常に「みんなはどう思う?」と学生に問いかける姿勢を忘れない。教室が静まり返ることはなく、各所から声が上がる。

 発展性があるのも、中村先生の授業の魅力の一つだ。この日は、”stars”を「星々」と訳したグループがあったことから、話題が「英語と日本語における数字の概念の違い」へと発展した。松尾芭蕉の俳句「古池や蛙飛び込む水の音」を例に挙げ、英訳した場合は”a frog”なのか”frogs”なのかと、学生に問いかける。クラスにはカンボジアからの留学生がいるため、「同じアジアであるカンボジアではどうか」という話にまで膨らんだ。このように、中村先生のリーディングの授業では、文法解説から背景知識まで幅広く学び、「英文を読み、深く理解する」ことを目指している。

グループワークを支える『CaLabo EX』

 中村先生が日本大学理工学部に赴任した当時、船橋キャンパスにはLL教室しかなかった。「より良い授業のためにはCALL教室が必要だ」という中村先生の思いが次第に他の先生方の共感を呼び、情報教育研究センターの協力の下、2室がCALL教室に作り替えられた。中村先生は、かつて教えていた大学でチエルの『CaLabo EX』を使用した経験がある。その際に利便性の高さを感じていたため、システム導入にあたって同製品を強く推した。

 中村先生の提案を受け、『CaLaboEX』の導入を決めた理工学部の山本寛学部次長は、「導入の決め手は、グループワークに関する機能の充実度」だったと言う。日大は学生数が多く、理工学部の語学の授業は1クラス60名ほど。一人ひとりを細かく指導するのは難しい。「グループ学習だと指導もスムーズですし、グループ内での教え合い、学び合いも活発になります。グループリーダーの画面を共有したり、グループ内でのチャットを活用したりと、非常に便利です」と中村先生は『CaLabo EX』の機能を評価する。

 さらに、中村先生は、「『CaLabo EX』で共有する臨場感、一体感が授業を活性化する」と述べる。「クラス全員が同じものを見てシェアすることが重要。どんな意見や質問が出てくるかわからないからこそ、面白い。学生と同じ目線を持ちつつも、教室全体の空気を見ながら、学生が自由に意見を交わし合える雰囲気づくりを心がけています」

システムをどう生かすか、試行錯誤することが重要

 山本先生は、「システムを生かすのは人」と言い、「システムを入れたことで安心するのではなく、入れてからどうするかを考え、活用法を試行錯誤していくことが重要」と主張する。また、『CaLabo EX』について、「システムは変化しないものというイメージがありますが、『CaLabo EX』はそうではない。私たちユーザーからの要望への対応が速く、機能が次々に更新されていくので、共に歩んでいける存在だと感じています」と述べる。

 理工学部では、システム活用法のワークショップなどを開催している。「理工学部に留まらず、日大全体にCALLを活用した授業を広めていきたい。システムはツールの一つ。ツール自体の活用法ではなく、ツールを介して授業の組み立て方を考えていくことが大切なのだと、伝えていきたいですね」と中村先生は抱負を述べる。

 中村先生の後期の授業では、グループワークをさらに発展させ、PowerPoint を使って資料を作成、発表し、それに対してクラス内で議論を交わす形式の学習にも取り組んでいく予定だ。『CaLabo EX』を活用しての新たな授業展開に、今後も目が離せない。

製品導入の経緯

●LL 教室しかなく、CALL 教室への切り替えを検討していた。
●学生数が多いため、グループワーク機能が充実しているシステムを希望していた。
●中村先生は前任校で『CaLabo EX』の使用経験があり、利便性を体感していた。

導入後の変化・成果

●グループワークがスムーズに進むようになった。
●画面共有によりクラスに一体感が生まれた。
●インターネットの情報やパソコンで作成した資料を手軽に入手・確認できるようになった。

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